「この人しかいなかった」と感じるキャスティング
Q:映画を観た後では夏野幹夫役は高橋一生さん以外想像できませんが、キャスティングのポイントはどこにあったのでしょうか。
利重:今の時代背景を考え「40代であるべきだ」と思い直したとき、フッと彼の顔が頭に浮かんだんです。そう思ったらもう「声をかけてみよう」と。彼は日本でも屈指の俳優ですし、以前共演した際も、見事に役になりきる姿を間近で見てきました。彼ならこの役を形にしてくれるのではないかと。
「他の人は考えられない」と言っていただけるのは、映画にとって一番の褒め言葉です。もちろん、別の方が演じればまた違う魅力の映画になったでしょうし、その時は「この人しかいなかった」と感じるものになったとは思います。ですが、誰が見ても高橋一生でありながら、同時にどこにでもいる地味な会社員の幹夫にしか見えない。あの不思議な存在感は、改めて見事だなと思いました。スター映画としてではなく、血の通った一人の人間として作品の中に生きてくれました。
Q:相手役の呉城久美さん演じる繁子は難しい役柄だったかと思いますが、呉城さんとはどういったお話をされたのでしょうか。
利重:彼女は「ヒントをください」と言ってきて、僕の言葉を自分なりに噛み砕いて、非常に直線的に「謎の女」を作ってくれました。もっと得体の知れない感じで来るのかなと思っていたので、意外な感じで面白かったです。すでにキャリアのある女優さんですが、あえて「まだイメージの定まりきっていない方」を選ぶことで、観客に「この人誰?」という新鮮なワクワクを感じてほしかった。彼女を起用できたことは収穫でしたね。

『ラプソディ・ラプソディ』(c)2026 利重 剛
Q:ご自身で演じられた幹夫の叔父・大介は、幹夫の遊び相手かと思いきや、実はじっと見守っている温かな存在。とても好きなキャラクターでしたが、大介に込めたものがあれば教えてください。
利重:大介叔父さんとゲイチ(芹澤興人)は、いい加減なようでいて実は受け入れ幅が非常に広い人たち。一方で、幹夫と繁子、そして毒島りずむ(池脇千鶴)の3人は、皆どこか「自分のせいではないことを自分のせいだと思い込んで生きてきてしまった」繊細な人たち。彼らが少しずつ他人に近づいていこうとするこの物語において、それを面白がって見守る存在が必要だと思い、大介とゲイチというキャラクターを作りました。
Q:難しい役どころをちゃんと成立させていた、池脇千鶴さんも素晴らしかったです。
利重:そうなんですよね。本当に見事だなって感心しました。画面のかなり後ろの方に映っているときでも、必ず何かしらを見せてくれるんです(笑)。