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『猫を放つ』志萱大輔監督 7年の歳月をかけ長編として甦った中編映画【Director’s Interview Vol.548】

『猫を放つ』志萱大輔監督 7年の歳月をかけ長編として甦った中編映画【Director’s Interview Vol.548】

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重ねた年月をすべて映画に入れる



Q:スタッフ、キャストはまた再結集したんですね。カメラマンは二人体制になっています。


志萱:過去編は、今は『キングダム』シリーズなどを撮っている三代郁也君に撮ってもらい、現代編ではあえて別のカメラマンにお願いしました。撮る人が変われば視点も変わる。その差異が出ることも踏まえて、一つの実験として捉えていました。


Q:年代ごとの人物造形が見事でしたが、あれは実際に俳優の皆さんが重ねた歳月そのものだったのですね。


志萱:そうです、本物ですね(笑)。撮影が止まっていた間、俳優たちの内面も見た目も変わっていきました。画面には映りませんが、脚本を書いている私の考えもまた変化しています。その経過した部分を、人物造形や二度と戻れない時間への感覚として、すべて映画に入れていくという作業でした。


Q:過去編は編集もやっていたのでしょうか。


志萱:編集までやっていました。7年の間に10パターンほど作り、50分版や30分版、細かいシーンの有無などをひたすら検証していました。それを俳優の二人にも見せて、「なんか上手くいかないね」「もっとこう直したほうが良いのでは」といった話を断続的に続けていたんです。


Q:7年前といえば、監督が大学を卒業しPFFで受賞された直後です。当時の自分のスキルや未熟さに対する「恥ずかしさ」みたいなものはありましたか。

 

志萱:まさにその「恥ずかしさ」は常にありました。過去の素材を見ながら現代を考える作業は、自分の至らなさを突きつけられるようで、常にナイフで迫られているような感覚でした。


それでも色々と考えた結果、その「拙さ」や「恥ずかしさ」さえも、自分が映画を撮り続けられるのであれば一つの大切な資料ではないか。そういう考えに至ったんです。過去を否定せず、それも含めて記録することに確信が持てるようになりました。



『猫を放つ』© 2025 “Leave the Cat Alone” Film Partners


Q:実際に拝見すると、過去編に拙さなどは全く感じません。むしろ俳優の方々の若さや、まだ年を重ねていない幼さのようなものが、記憶の断片として非常に良い効果をもたらしていると感じます。


志萱:当時は意識していなかった「若さ」が、数年経った先から見ると、狙っていないリアリティとして記録されている。それは面白い発見でした。


Q:タイトルはどのタイミングで決まったのでしょうか。


志萱:7年前から決まっていました。僕の場合、脚本を書き上げる前にまずタイトル案が浮かびます。先に決めた「猫を放つ」というタイトルの語感や響きが、「自分の生きてる感覚」にフィットした時、ようやく映画が作れるという兆しになるんです。脚本を書くプロセスは、この言葉自体を自分自身で検証していく道中でもあります。


Q:劇中に猫そのものは登場しません。


志萱:釜山国際映画祭でも「猫が出てこないじゃないか」と言われました(笑)。ただ、かすかに猫の声は入れていますよ。




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