惹かれたのはホン・サンスの実験的感覚
Q:編集作業において脚本との差異はありましたか。
志萱:基本的には脚本通りですが、エディターの坂田貴大君に整理を任せました。当初僕が編集したものは、記憶の断片を盛り込みすぎて3時間を超えていました。それを脚本を読み込みながら、今の形に落とし込んでいきました。
Q:撮影におけるルックやカット割りはどのように決めていますか。
志萱:ショットの図柄に関する、配置やサイズ、カメラの距離感などは、事前にコンテを作り込んでいくわけではありません。「こういうのが良いな」というイメージは持っていますが、基本的にはコンテを描かずに現場に入ります。その場で軽く芝居を通してみて、どういう位置に入っていけば最小限のカット数でいけるか、なるべく割らずに撮るにはどうすべきかをメインに考えて作っていきます。
あとはカメラマンと細かく話をしています。僕は結構こだわりを伝えてしまう方で、例えば「窓ガラスの反射」などは積極的に取り入れるよう相談したりしました。窓ガラス越しに人物がいて、その手前のガラスに反射している風景の中に人がいる、といったショットなどは、具体的に話しながら撮っていきました。

『猫を放つ』© 2025 “Leave the Cat Alone” Film Partners
グレーディングは、同級生であり「ARTONE FILM」というグレーディングスタジオに所属している有賀遼にお願いしています。彼女とは気心が知れた長い付き合いなので、「こういう感じが合うんじゃないか」と話し合いながら、映画の風合いを決めていきました。
Q:影響を受けた監督や作品について教えてください。
志萱:数多くありますが、ベースとしてあるのはホン・サンス監督ですね。彼の実験的な感覚がすごく好きです。ほかにも、エドワード・ヤン監督の『恐怖分子』(86)の冷え冷えとした画面作りや、ロバート・アルトマン監督の『雨にぬれた舗道』(69)『ロバート・アルトマンのイメージズ』(72)などの、反転していく構成にもすごく影響受けています。フランソワ・オゾン監督の『まぼろし』(00)、七里圭監督の『のんきな姉さん』(02)、濱口竜介監督の『親密さ』(12)も大好きです。バス・ドゥボス監督の『Here』(23)は、本作を作っているときにちょうど上映されていて、その流れていく時間感覚などはすごく影響されていると思います。
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監督/脚本:志萱大輔(シガヤダイスケ)
1994年神奈川県生まれ。日本大学芸術学部卒業。卒業制作映画『春みたいだ / Spring Like Lovers』がPFFアワード2017や第27回TAMA NEW WAVE コンペティション部門など入選。2020 年には ndjc2020 に選出され、制作した短編映画『窓たち / Windows』は第 26 回釡山国際映画祭Wide Angle Asian Short Film Competition部門で上映された。本作『猫を放つ / Leave the Cat Alone』が初長編作となる。
取材・文:香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
撮影:青木一成
『猫を放つ』
5月2日(土)よりユーロスペースほかロードショー
配給:イハフィルムズ
© 2025 “Leave the Cat Alone” Film Partners