パフォーマンスの周りには物語がある
Q:マイケルが生み出した数々のライブやミュージックビデオが再現されますが、それらは単なる再現にとどまらず、圧巻のパフォーマンスとして観ている我々の心を鷲掴みにします。過去の映像とどう差別化されているのでしょうか。
キング:ロケーションは本物にこだわりました。「スリラー」では実際にマイケルが撮影した通りで撮影し、「ビリー・ジーン」もマイケルが踊ったステージで撮影しました。ただ違うのは、そこにジャファーを加えたことです。それは単に叔父のモノマネをするという事ではありません。再び魔法を生み出そうとしたのです。すべてのパフォーマンスにはストーリーがある。そして、それが物語全体を引き込むのです。
例えば「ビリー・ジーン」のステージで、マイケルが初めてムーンウォークをしたことは誰もが知っています。しかし舞台裏で起きていた事は誰も知らない。我々はそこに至るまでの物語を付随させ、ストーリーを作りました。パフォーマンスの単なる再現や現代的翻訳をするだけではなく、前後の物語を描くことで、そのパフォーマンスの意義を伝える。「マイケルが何をしたのか」だけではない。その周りにはストーリーがあるのです。

『Michael/マイケル』®, TM & © 2026 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
Q:撮影初日に撮るものとして1988年のウェンブリー・スタジアムでのパフォーマンスを選んだそうですが、この物語のクライマックスとも言えるシーンをいきなり初日にぶつけるという大胆なスケジュールにはどんな狙いがあったのでしょうか。
キング:あれは『ボヘミアン・ラプソディ』の経験からですね。当時はLive Aidのシーンを最初の10日間で撮影したのですが、俳優たちは嫌がっていました。しかし私には、そのパフォーマンスのシーンの撮影後、俳優たちはキャラクターへの理解が深まり、楽しさと自信が強まったように思えました。
今回のウェンブリー・スタジアムの撮影が終わった後、私はジャファーに言いました。「さぁ次はドラマティックなシーンだ。君はもうステージでマイケルを掴んだんだ!」と。俳優にとって最も難しいシーンを先に撮ることで、俳優はキャラクターを感じ取り、ドラマティックなシーンをこなすことができる。さらにそれを見て、シーンへの考え方も変わる。ジャファーがメイクをして叔父を演じている姿を見ていると、いくつかの改善点も見えてくるんです。
Q:企画の立ち上げから実施、キャスティングからスタッフィングまで、あなたのこだわりがぎっしり詰まっています。あなたの考えるプロデューサーの醍醐味とはどこにありますか。
キング:この映画をリリースした最大の喜びは、マイケルが音楽で実現していたことを表現できたこと。マイケルは音楽を通して人々を結びつけようとしていました。私が求めているものも同じです。映画を通して人々を結びつけたい。世界中の人たちがこの映画を観て、祝福し、踊り、楽しみ、この暗い現実から解放される。癒しと娯楽のひとときを提供したいのです。マイケルもきっと満足してくれると思います。それが私にとっての喜びです。
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製作:グレアム・キング
アカデミー賞受賞プロデューサーのグレアム・キングは、メジャー作品からインディペンデント作品まで、映画界を代表する作り手たちとともに数々の作品を送り出してきた。過去30年のあいだに、製作または製作総指揮を務めた作品は45本を超え、北米での興行収入は12億ドル、全世界では36億ドル以上にのぼる。批評家や映画団体からも高く評価されており、キングが手がけた作品はアカデミー賞71部門、ゴールデングローブ賞42部門、英国アカデミー賞66部門にノミネートされている。イギリス出身のキングは、1982年にアメリカへ移り住み、2009年には大英帝国勲章を授与された。
取材・文: 香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
撮影:青木一成
『Michael/マイケル』大ヒット上映中
配給:キノフィルムズ
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