※向かって左から乙木勇人監督、Peter Clay監督
『Flicker』Peter Clay監督 × 『まわりまわる』乙木勇人監督 趣味とプロ、正反対の映画監督 at SSFF & ASIA 2026【Director’s Interview Vol.568】
定点ワンカットは役者を信じて託すこと
Q:『まわりまわる』は、公園の遊具(グローブジャングル)を使ったアイデアが新鮮でした。
乙木:定点でカメラを動かさずに撮るという手法が映画を撮る前から決まっているので、「何を撮ったら面白いのだろう」と毎日のようにアンテナを張っているんです。生活の中でグローブジャングルを見た時に本作のアイデアが思い浮かびました。

『まわりまわる』
Q:演技面での演出はどのようにされましたか。
乙木:僕の場合、定点ワンカットという特殊な手法なので、編集ができないんです。後から編集で切って短くすることや、演技の間を修正することができない。事前に細かい秒数を台本に書いて、それを元に「ここのお芝居、あと1分短くしてください!」とか、秒数でお芝居をコントロールする方法を取っています。そこが他の監督さんの演出との明確な違いなのではないかと。
あと、主題歌を決めた後に脚本を書き出しているのも、僕の映画作りの特徴だと思います。主題歌が入るタイミングも含めて、曲が流れる場面と起きる出来事が事前に決まっている。本当に秒数で全てをコントロールしている感じですね。
Q:役者さんが感情を表出するタイミングと、それを尺に収めることの両立は難しいように思います。役者さんにはどのようなバランス感で演出をされているのでしょうか。
乙木:キャスティングする時点で、演劇経験のある方もしくは定点ワンカットの手法に耐えうる役者を選ぶようにはしています。僕の作品には、そこを持たせられないとどうしても勝負にならないところがあって…。それに、定点ワンカットの撮影が始まってしまったら僕は無力で、もう何もできなくなる。だからこそ、役者の力を信じて託すしかないんです。
Peter:現場の緊張感がすごそうですね。カメラの後ろでは、ジェスチャーなどの指示出しはされていますか。
乙木:やりますね。タイムを測っているので、「さっきより3秒遅い!巻け、巻け!」って(笑)。
Peter:演技をしていると目線を向けることもできないですよね。役者さんは大変そうですね。
乙木:僕の作品によく参加してくださる役者さんが、「乙木作品は考えることが多すぎるから、何も考えなくてもセリフが出てくる状態まで落とし込まないといけない」と言っていました。本当に役者さんの負担は大きいと思います。