※向かって左から乙木勇人監督、Peter Clay監督
『Flicker』Peter Clay監督 × 『まわりまわる』乙木勇人監督 趣味とプロ、正反対の映画監督 at SSFF & ASIA 2026【Director’s Interview Vol.568】
2026年5月25日(月)~ 6月10日(水)に、「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2026(SSFF & ASIA 2026)」が東京で開催。6月30日(火)まではオンライン会場で引き続き開催中だ。今回は「シネマエンジニアリング」をテーマに、世界各国から集まった5,000ほどの応募の中から選び抜かれた、約250作品のショートフィルムが堪能できる。
CINEMOREでは6月6日(土)~ 6月9日(火)の4日間に渡り、会場のWITH HARAJUKUにてPodcastの公開収録を実施。映画祭に作品を出品された監督やプロデューサーをゲストに迎え、話を伺った。
今回のゲストは『Flicker』を撮ったPeter Clay監督と、『まわりまわる』を撮った乙木勇人監督。一枚の画作りからエンドロールまでこだわり抜いたPeter監督と、定点ワンカットを用いて秒単位でコントロールした乙木監督。何もかもが正反対の2人が目指した映画づくりとは。
※本記事はCINEMORE Podcastで配信した内容をテキスト化・編集したものです。Podcastでもぜひお楽しみください。
『Flicker』あらすじ
無機質で角のある“□”い(四角い)日々を送っていた主人公が、とある場所で弟と久々に再会。弟の何気ない瞬き、ささやかな煌めきに触れ、次第に人生の“○”(丸み)を取り戻していく。
『まわりまわる』あらすじ
秋の午後、かつて遊んだ公園で再開した“さな”と“あさ”。たわいもない会話から始まるふたりの時間は、10年前に止まった記憶を回しはじめる。定点ワンカットで描く、ふたりと、ふたつの「告白」の物語。
Index
16分中、2分がエンドロール
Q:乙木さんは『Flicker』を観た感想はいかがでしたか。
乙木:「僕には絶対作れない映画だ」というのが一番の印象でした。作家としてのPeter Clayの良いところが全て出ていて、そんな感性のくすぐり方があるのかと。役者陣のお芝居もそうですが、特に一枚の画に対するカメラワークのこだわりがすごい。音も含めて、これはPeterさんにしか作れない作品だと思いました。本当に痺れる作品なので、できれば大きなスクリーンで観ていただきたいです。
Q:Peterさんは『まわりまわる』を観た感想はいかがでしたか。
Peter:いただいた言葉をそのままお返ししたいところですが…(笑)。乙木監督は、定点ワンカットの作品しか撮っていないんですよね。今回の映画祭で最恐賞を受賞した『ありがとう、ね』(26)という縦型のホラー作品も、定点ではないけれどワンカットで作られている。そういう意味では、作品を重ねていく中でトライアンドエラーを繰り返して挑戦し続ける人なのだと思います。本作も乙木監督にしか作れない映画だったのではないかと。
特に、脚本のレベルが段違いだと思っていて。以前、乙木監督にもお話ししたことがあるのですが、脚本の上手さに加えてセリフの面白さもあり、笑える部分と感動する部分の入り交じり方が本当にすごい。定点ワンカットだと気づけないぐらいの脚本力なんです。観終わった時に「あ、定点だったな」と気づく。演技の演出も、クルーとキャストを信用しながらも自分のやりたいことを貫く。そういうところが評価されている理由なのだと思います。もう絶対離したくない、今後もずっと仲良くしたいと思っています(笑)。
Q:Peterさんは、映画監督としての名義が“Peter Clay”なのでしょうか。
Peter:そうですね、本名ではなくディレクターネームです。良い意味なのかは分からないのですが、映画を観ていただいた方からは「邦画っぽくない」と言われることが多いですね。映画とクレジットだけ見ると、海外の人が作ったみたいな(笑)。
Q:『Flicker』は、詩的な映像が印象的でした。特にエンドロールは非常に凝った作りで驚きました。
Peter:僕はエンドロールが大好きなんです。エンドロールの最中にその映画がどういうことだったのか、自分だったらどうするのかと考える。エンドロールは、自分と対話する時間になると思っています。この映画を観て下さった方が自分と対話する時間になるような、作中の表現と絡めたエンドロールにしたいと考えて、あの演出を作っていきました。
乙木:『Flicker』のエンドロールを観て「え、エンドロールってあれ(縦スクロール)じゃないの?」となりました(笑)。僕の作品は名前がポーンと出てくるだけのエンドロールなので、情けないような恥ずかしいような…(笑)。
Peter:『Flicker』は16分の短編映画なのにエンドロールが2分もあるんです(笑)。その2分が大事なのではないか。映像を先に作って、作曲家の方と「どこで音を合わせて、どこで画を止めるか」を決めて作っていきました。また、今回のテーマのひとつが「瞬き(まばたき)」で、エンドロールを観た後に瞬きをすると丸い残像が瞼の奥に残るようにしました。劇場での体験を大事にしたくて、そういう演出を考えていきました。