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第1話に全てあり ジョン・ファヴローの『ヤング・シェルドン』第1話【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.74】

第1話に全てあり ジョン・ファヴローの『ヤング・シェルドン』第1話【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.74】

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9歳の高校生シェルドン・クーパー



 『スター・ウォーズ』シリーズのスピンオフ作品であり、3シーズンに渡るドラマ・シリーズの劇場版である『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』(26)が公開され、多くの観客が緑色の小さなグローグーに魅了された。個人的にもひとに勧めづらいことこの上ない一大サーガだった『スター・ウォーズ』だが、キャッチーなストーリーにキュートなキャラクターがいればそんなハードルは軽々と乗り越えられてしまうらしく、ここへ来てそれまでシリーズに触れてこなかった人々が事前知識なしに劇場に足を運び、SWに触れていくという驚くべき事態が、少なくともぼくの観測範囲では多く見られた。


 監督のジョン・ファヴローは視覚的に強い作家性を打ち出すタイプではなく、どちらかと言えば職人的でバランス感覚に優れた作品を送り出してきた印象だ。しかし、そのフィルモグラフィーを振り返れば、一つの共通した関心を見出すこともできる。彼の作品には、子どもや親子関係、あるいは大人になりきれない人物がしばしば物語の中心に置かれているのだ。


 作風の異なる『エルフ ~サンタの国からやってきた~』(03)と『アイアンマン』(08)にしても、エルフに育てられた孤児バディとプレイボーイの大富豪トニー・スタークは、どちらもどこか「大きな子ども」と呼べる存在だろう。一方で『シェフ 三つ星フードトラック始めました』(14)や 『マンダロリアン』シリーズ(19~)では、子どもとの関わりを通して成長していく父親像が描かれてもいる。


 そんなファヴローの監督作のひとつとして紹介したいのが、『ヤング・シェルドン』(17~24)の記念すべきシーズン1第1話「Pilot」(日本語タイトルは「9歳の高校生」)だ。後に7シーズンにわたって続くことになるこのシリーズの魅力が、驚くべきことに20分程度の初回エピソードの中にほぼ出揃っている。


 本作はギーク(オタク)たちの日常を描いた人気シットコム『ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則』(07~19)の主要キャラクター、シェルドン・クーパーの生い立ちに焦点を当てたスピンオフ作品。『ビッグバン~』では天才的な頭脳と、コミックやSF作品への深い造詣、強迫的なまでのルールへのこだわり、悪気もなく他人を見下してしまう性格ゆえに、周囲を困惑させてきたシェルドン。さぞ常軌を逸した天才少年ぶりが描かれるだろうと思いきや、オリジナルのシットコムと同じ性格や特徴を持ちながらも、本作のシェルドンは決して笑いの対象としてだけ描かれてはいない。


 『ヤング・シェルドン』は原典と同じ笑い声を伴うマルチカメラによるシットコム形式は採らず、幼いシェルドンが家族や周囲の人々とどのように関わりながら成長していったのかを描く、家族ドラマとしてのコメディに再構築されている。子どもや家族を中心に扱ってきたファヴローがその出発点である初回エピソードを手がけたことにも納得できる。


 ときは1989年、テキサス州東部メッドフォードで暮らす9歳のシェルドンが、その天才的頭脳ゆえに高校に飛び級することになる。それは高校生の兄とクラスメイトになることを意味し、ずば抜けた知性により教師たちにも恥をかかせることにもなり、早くも周囲との軋轢を生んでしまう。彼は並外れた知性を持ちながらも、ルールに固執し、極度の潔癖症のため顰蹙を買いやすいのである(食卓で家族と手を繋いでお祈りをするときも手袋は欠かせない)。そんな彼を唯一理解し(というより理解しようとする)、なにがなんでも守ろうとするのは母メアリーであった。




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