© 2025 185 FILMS, HAUT LES MAINS, MOMO FILM CO.
『ユースフル・ゴースト』ラッチャプーム・ブンバンチャーチョーク監督 ホラー&コメディから社会批判まで、予測不能な映画体験の秘密【Director’s Interview Vol.574】
怖くない幽霊、掃除機という必然
Q:劇中の人々は、幽霊が現れてもあまり驚きませんよね。タイではホラー映画が人気だそうですが、タイの人々にとって「幽霊」とはどのような存在なのでしょうか。
ブンバンチャーチョーク:タイ人は幽霊の物語が好きで、ホラー映画も大好きです。ただし、幽霊を怖がらないわけではないし、実際に幽霊と遭遇したら逃げ出すと思います(笑)。人々が幽霊を怖がらないのは、あくまでも私の作った映画の中だけの話ですね。
タイでは多くのホラー映画が作られており、今も月に1~2本の新作ホラーが公開されている状況です。だからこそ、私は「幽霊が怖くないとしたら、彼らはどんな存在なのだろう?」と考えました。怖くない幽霊を前にして、人々はどう振る舞うのかと。
不思議なことに、タイではスリラー映画の人気があまりないのです。理由はわかりませんが、タイ人は幽霊の恐怖を信じ、楽しみながら、その一方で人間の恐ろしさは信じても楽しんでもいないかのよう。創作のうえでは、この事実も意識していたと思います。

『ユースフル・ゴースト』© 2025 185 FILMS, HAUT LES MAINS, MOMO FILM CO.
Q:幽霊が取り憑く家電として、なぜ掃除機を選んだのでしょうか。別の選択肢も検討しましたか。
ブンバンチャーチョーク:「なぜ掃除機なのですか」と聞かれると、冗談で「洗濯機で撮影するのは難しいから」と答えています(笑)。けれども本当の理由は、タイの粉塵問題を扱っている物語だから。粉塵を取り除くために作られた機械である掃除機こそ、幽霊が取り憑く対象としてふさわしいと考えました。
ひとつ面白い話があって、博士の自宅シーンは、あるドイツ人エンジニアの別荘で撮影したのですが、トイレに入ると自動で便座が開き、「こんにちは」と挨拶してくれるんです(笑)。そこで「幽霊がスマートトイレに取り憑くのはどうだろう?」とも思いましたが、いかんせんトイレはその場から動けないので無理だと気づきました(笑)。だから、意外と冗談ではなくて、物理的にも掃除機がベストだったと思うのです。洗濯機や冷蔵庫だとサイズが大きすぎるけれど、掃除機はコンパクトで車輪も付いていますから。