整った世界の中にある恐怖
Q:映画『辰巳』(24)や『岸辺露伴は動かない』シリーズを手がけた、撮影監督の山本周平さんによる画作りが、映画を一つ上のレベルに引き上げています。山本さんとはどのような経緯でタッグを組まれたのでしょうか。
西山:本作には坂本さんの他に、映画『辰巳』を手がけた鈴木龍さんにも共同プロデューサーとして参加していただきました。鈴木さんとはLAの映画祭で知り合ったのですが、彼らのチームが『岸辺露伴』シリーズを手がけていると知ったんです。僕が『岸辺露伴』の大ファンだったので、「ぜひ山本さんと一緒にやりたい」とお願いしました。
当時、山本さんたちは映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』(23)の撮影中だったのですが、「ルーヴル帰りなら行けます」という話になり、ルーヴル美術館での撮影の1週間後に、パリから愛媛の田舎に来ていただくことになりました。現場には「I Love Paris」と書かれたTシャツを着て来られましたね(笑)。
Q:山本さんにはどのようなオーダーをされたのでしょうか。
西山:とにかく「異常なまでに綺麗に見せたい」とお伝えしました。僕の中には、「日本はものすごく綺麗に整っているけれど、その綺麗さの中に不気味さを感じる」という感覚があります。綺麗に整頓された空間にこそ、本当に怖いものが隠されているのではないか。だからこそ、残虐なパートをあえてクリーンに隠し、直線的でシンメトリーな構図の中に主人公のエレナをポツンと配置しました。全てが整っているからこそ、彼女が異物に見え、不穏な空気が漂う。その「整った世界の中にある恐怖」を描きたかったんです。
また、本作はVFX(CG)のカットが非常に多いため、クオリティを担保しつつどう作り上げていくかということも大きなチャレンジでした。

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Q:まさに“インビジブル”なところを中心にVFXが使用されたのかと想像しますが、そのクオリティも高くて素晴らしかったです。画コンテなどを描いて綿密な打合せをされたのでしょうか、それとも現場でのフレキシブルさを残して撮影に臨まれたのでしょうか。
西山:全て準備しています。画コンテも用意しましたし、一部のシーケンスに関しては、事前に3DCGで学校そのものを作った上でビデオコンテを制作するという、ハリウッド的な手法で準備をしました。現場では、単に役者のお芝居を撮るショットだけでなく、「プレート」と呼ばれる背景の空絵など、CG素材用の撮影が数多く必要になります。そのため、何が必要なのかを全てリスト化し、「今撮っているこのカットはこういう空絵がないと成立しない」ということが完全に把握できる状態にして、どんどん撮り進めていかないと間に合わない。そういったCG面での事前準備だけで、おそらく2年ぐらいは掛かっていますね。