自然に溶け込ませるCG
Q:VFXを担当された白組のCao Moji(顔文字)さんとは、かなり綿密なやり取りをされたのでしょうか。
西山:Cao Mojiとは高校時代からの付き合いで、僕の全作品に参加してくれています。今年で27歳の僕と同い年ですが、高校生当時はそれぞれ愛媛と仙台に離れて住んでいて、Twitterで見つけてDMで連絡し、そこから一緒に映画作りを始めました。お互い顔も声も知らない状態からスタートした関係です。
彼は僕がやりたい表現を完璧に理解してくれていますし、僕も彼のスキルを把握しています。今回の作品は、僕と彼の2人で「個人の力の限界」に挑んだ集大成でもあります。当時、彼は白組で『ゴジラ-1.0』(23)のメインCGを担当していて、大戸島のシークエンスなどを手掛けていました。「月〜金はゴジラ、土日はインビジブルハーフ」という生活で、休日に彼の家に集まってはCGのテストを繰り返しました。僕が主人公や怪物の役をやり、彼が撮影してエフェクトを付ける。そうやって2年かけて準備をしました。
Q:透明な怪物以外にも、VFXは使われているのでしょうか。
西山:はい、実は気づかれないような部分でも多用しています。今回は「CGをCGっぽくなく、自然に馴染ませる」ことを目指しました。例えば、空に浮かぶ月のショットや、怪物が現れるシーンで少しずつズレていく机、椅子、床も全てCGです。海の一部のカットもCGに差し替えています。
映画ファンの中にはまだ「CG=嘘くさい」と抵抗感を持つ方もいるので、CG技術を見せびらかすのではなく、作品の質をリッチにするために自然に溶け込ませる方向に舵を切りました。自主制作映画としては異例ですが、本編の約80〜90カットがVFXショットになっています。

『インビジブルハーフ』Ⓒ 2025 Test 8 Pictures All Rights Reserved.
Q:足跡がつくところなど、いわゆる“インビジブル感”を出すところではCGを使っているのかなと思いましたが、それ以外は全くわかりませんでした。
西山:それは嬉しいですね。実は全ての机がCGショットに変わっているシーンなどもあり、そういったものを少しずつ入れ込んでいました。 また、山本(周平)さんの撮影技術が関わってくる部分だと、光が差し込んでくる夢のようなパートがあるのですが、そこは最初からCGで光源を追加することを前提に撮影しています。スモークの中に月光が差し込むように、光の筋がバッチリ入っているのですが、現場では薄くしかスモークを入れていません。というのも、スモークを焚きすぎると画面全体がモヤっとしてしまい、くっきりとした光の筋は出ないんです。なので、CGでシミュレートした光を後から追加することを想定したライティングとスモーク量で撮影し、そこにCGで光を足しました。
Q:事前のシミュレーションができているかどうかで、現場での進行が全く違いそうですね。
西山:全然違いますね。昔の話になりますが、僕が高校生の頃にCao Mojiと2人で最初に作ったのが、宇宙で地球が爆発するような映画だったんです。そういった、実写合成においてCGを使うような映画を、約10年近く一緒に作ってきました。そこで得た知見は大きかったですね。彼は『シン・ウルトラマン』(22)などの商業大作にも参加していたので、そこで学んだCG表現をこの作品で生かしてくれました。
ただ、今回は予算が少なすぎて彼は現場に来られなかったんです。CGディレクターが不在の現場で僕がCGの判断をし、「このショットでCG合成できるかな…」と不安になった時は、彼にLINE電話をして画面を見せながら「これでいける?」と都度確認していました。LINE電話だとどうしても画質が落ちるので、彼も「わかんないけど、たぶん大丈夫」と答えていましたね(笑)。