現在、弱冠27歳の西山将貴監督が、19歳で着想し足掛け6年の歳月を経て完成した長編デビュー作『インビジブルハーフ』。SNSや同調圧力が生み出す現代的な恐怖を、ホラーというフィルターを通して見事に描き出している。本作の着想から自主制作での挑戦、盟友Cao MojiとのCG制作など、独自の映像表現について話を伺った。
西山将貴監督はいかにして『インビジブルハーフ』を作り上げたのか。
『インビジブルハーフ』あらすじ
クラスメイトがいなくなった夜、“その見えない怪物” は現れた。ミックスルーツを持つ高校生・エレナ。見た目や名前で「外国人」扱いされ、転校先のクラスにも馴染めずにいた。そんな彼女の前に、ある日突然現れたのは——“スマホに触れている時だけ見える透明な怪物”。唯一エレナを信じてくれたアカリとともに、正体不明の恐怖に立ち向かうが…この恐怖に向き合うのは、きっと一人じゃない。
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怖いと感じたことを、どう映画に置き換えられるか
Q:本作は19歳の時に着想されたそうですが、何かきっかけはありましたか。
西山:僕が19歳だった2018〜19年頃は、子供でもスマホを持ちだした印象がありました。それまでは「親が子供にスマホを買い与えるのは有害だ」と言われていましたが、その空気が変わり、SNSをやることすら怖くない時代へと移行していきました。当時の僕にとって印象的だったのは、「SNSは怖い」と言っていた人たちが次第に自分の顔写真をアップし始めたこと。同時にSNSでの「炎上」も流行り始めた。全く知らない匿名の人がリプライ欄で激しく攻撃してくるようになり、その人たちのアイコンは決まって「グレーの人型シルエット」でした。
最初に抱いた着想は、「あのグレーのシルエットの奴らは怖い」という感覚でした。相手が誰なのか調べても分からず、中身は透明な存在。その透明な存在から否定され、攻撃されることは、現代社会における新たな恐怖になり得るのではないか。そこから、その存在を「怪物」に見立てて映画を作れないかなと。さらに、僕自身が古典文学も好きだったので、H.G.ウェルズの「透明人間」という古典SFと現代性を掛け合わせることで、新しい作品にできないかと考え始めた。それが19歳の時でした。
Q:「SNSのアイコンが怖い」と感じるように、ホラー映画のネタを探す習慣があったのでしょうか。
西山:そういう習慣が特別あったわけではないですが、怖いことって生きているだけでたくさんあると思うんです。例えば、学校での集団行動に恐怖を感じたり、テストで点数化されるのが怖かったり。日々生きていれば、怖いことはいろんなところに潜んでいます。それをピックアップして「ホラー」という形で描いているだけなんです。
本作のテーマである「視線」、周りからどう思われるかが怖いという感情も、学生時代に誰しも経験したことだと思います。日頃からネタを探しているというよりは、自分が日々の生活の中で怖いと感じたことを、どう映画に置き換えられるか。それを考えながら作っている感覚です。

『インビジブルハーフ』Ⓒ 2025 Test 8 Pictures All Rights Reserved.
Q:今年公開された下津優太監督の映画『NEW GROUP』では、集団行動の恐怖が描かれていました。
西山:実は、去年インドのゴア州で開催された映画祭で下津さんとお会いしまして、そこで『NEW GROUP』も拝見しました。そして、下津さんと出会って15分で、「ザビエルのミイラを観に行きませんか?」と誘ったんです。ゴア州にはフランシスコ・ザビエルの本物の遺体が安置されていて、二人で車に乗ってそれを見に行きました(笑)。
下津さんの作品もそうですが、最近試写で拝見した『チルド』(26 岩崎裕介監督)など、現代社会の冷たさや日本社会の無機質化をテーマにした作品が、たまたまホラーという形で増えてきている印象があります。本作も学校社会における冷たさや残酷さを描いており、偶然にもそういった作品が同時期に集まっていると感じました。
Q:社会性を意識して描いたというよりも、自ずとそうなっていったのでしょうか。
西山:そうですね。ミックスルーツを持つ女の子を主人公にしたことに関しては、社会性を描こうという明確な意図がありました。ただ、そこを除けば、エンターテインメントと社会性の両方を行き来できるようなバランスの映画を目指しました。