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『ケルト・ユートピア』デニス・ハーヴェイ監督 & ラース・ローヴェン監督 未来のために過去にも向き合う【Director’s Interview Vol.582】

向かって左からラース・ローヴェン監督、デニス・ハーヴェイ監督 © Locarno Film Festival / Ti-Press

『ケルト・ユートピア』デニス・ハーヴェイ監督 & ラース・ローヴェン監督 未来のために過去にも向き合う【Director’s Interview Vol.582】

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政治性を避けられない、アイルランドの文化的表現



Q:ローヴェンさんが2016年に発表した『Fonko』というアフリカ音楽を扱ったドキュメンタリーが本作の原型になったと聞いたのですが、どんな作品だったか教えていただけますか。


ローヴェン:両作品に共通しているのは、その土地でどんな音楽が演奏され、地元の人々のアイデンティティを形成しているのかを、植民地主義と脱植民地という観点から描いているところです。『Fonko』はアフリカの田舎でも撮影したのですが、セネガルのダカール、南アフリカのヨハネスブルグやケープタウン、アンゴラ、ルワンダ、マリといった大都市によりフォーカスしていきました。


最初は政治的な作品にするつもりはなく、様々なことが同時多発的に起きている音楽シーン全体を描くつもりでした。でも取材を重ねていく中で、伝統音楽がただの形式に留まらず、現代の音楽に引用され、人々のアイデンティティに直結していることに気づいたんです。彼らの音楽は、植民地時代の名残りを振り払う悪魔祓いのようなものにも思えました。


とはいえ『ケルト・ユートピア』の企画の最初期に『Fonko』の話はしましたが、決して続編ではなく、完全に別個の作品になったと思っています。


ハーヴェイ:影響という面で付け加えると、僕たちは『ケルト・ユートピア』を、アイルランドについて描いた想像上の三部作の三作目だと考えています(笑)。1作目はピーター・レノン監督の1967年の傑作『Rocky Road to Dublin』で、2作目はアラン・ギルスナン監督が1988年に発表した『The Road to God Knows Where』。この2作品はそれぞれの時代のアイルランドの政治的な温度感を描いていて、非常に参考になりました。


『Rocky Road to Dublin』はアイルランドの独立50周年、『The Road to God Knows Where』はEU加盟後に国家として成熟してきた独立75周年目に製作されていて、『ケルト・ユートピア』はだいたい独立100年に当たります。だから僕らはこの映画を、歴史の大きな節目にアイルランドについて考察する、大きな系譜の一本に位置づけているんです。



『ケルト・ユートピア』© MDEMC & SVERIGES TELEVISION SVT 2025


Q:先ほど『Fonko』は音楽の取材から初めて、社会や政治へと広がっていたと仰っていました。『ケルト・ユートピア』では最初から音楽と政治が映画の両輪になると考えていたのでしょうか。


ローヴェン:今回に関しては最初からどちらも想定していました。デニスは僕よりもアーティストたちのことにずっと詳しくて、僕は彼らの一部を知っていた程度でしたが、デニスと最初に会った時点で、すでに2人とも音楽面のリサーチを始めていたと言えます。


一方で僕たちは、ポスト植民地社会としてのアイルランドについて議論を重ねるようになりました。ヨーロッパにはヨーロッパ中心主義な一面があり、多くの人たちがヨーロッパに属するアイルランドが植民地化されていたという事実にすら気づいていません。彼らは違う現実を見ているのだと思います。ですが僕らは、この映画を作ろうと決める前からアイルランドの音楽と政治について関心を持っていたんです。


ハーヴェイ:ポスト植民地主義の文脈で見ると、アイルランドの伝統音楽やフォークミュージック、そしてアイルランド語は常に政治的なものにならざるを得ないのだと思っています。アイルランドは長きにわたりイギリスの統治下にあり、アイルランド語は禁止され、消滅しかけました。音楽も同じです。アイルランドの音楽は、常に自分のアイデンティティや、植民地支配という力関係の中で自分がどういう立場にあるのかを物語ってきました。ですからアイルランドの文化的表現を語るとき、政治性を避けることは不可能なんです。




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