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『ケルト・ユートピア』デニス・ハーヴェイ監督 & ラース・ローヴェン監督 未来のために過去にも向き合う【Director’s Interview Vol.582】

向かって左からラース・ローヴェン監督、デニス・ハーヴェイ監督 © Locarno Film Festival / Ti-Press

『ケルト・ユートピア』デニス・ハーヴェイ監督 & ラース・ローヴェン監督 未来のために過去にも向き合う【Director’s Interview Vol.582】

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希望や楽観が備わった映画



Q:社会や世界の問題を扱ったドキュメンタリー映画は、問題が複雑なあまり、観客が「何とかしたいけれど、どうしていいかわからない」と途方に暮れることが多いと思うんです。ですが『ケルト・ユートピア』ではある種の希望を感じられることが、嬉しい驚きであり、羨ましくもありました。この映画が提示する「希望」は、何年も取材する中で見出したものなのか、そもそも最初からひと筋の光が見えていたのでしょうか。


ローヴェン:この映画における希望は、僕たちが会った人々からもたらされたのだと思っています。事前に用意したシナリオは存在せず、彼らと多くの対話を重ねることで見えてきたのです。彼らが希望の担い手であることは、とても幸運だし、彼らが素晴らしい人間性の持ち主だからでもあると思うんです。



『ケルト・ユートピア』© MDEMC & SVERIGES TELEVISION SVT 2025


ハーヴェイ:もし50年前のアイルランドに戻りたいという人がいたら、正直、かなり正気ではないなと思ってしまいます。この映画でも描いたように、アイルランドは長らく非常に抑圧的な国でした。とても保守的で、貧しくて、文化的にも大変な苦難の時代がありました。多くの国民が仕事を求めて国を離れ、女性たちは社会的に虐げられていました。


今、アイルランドは良い方向に向かっています。まだ若い国で、問題は山ほど抱えていますが、より豊かになり、人々に自由があり、もっと平等な世の中になりました。さらに平等でインクルーシブな社会にするためにはまだまだ課題がありますが、多くのことが改善されてきています。


僕らはこの映画のために、アーカイブ映像で過去の紛争や女性差別や教会の横暴を振り返りました。その一方で、アイルランドに留まり、よりよいものを目指して音楽を作っている若者たちがいることに、圧倒的な希望を感じました。彼らが音楽で生活の糧を得るのは簡単ではありませんが、未来を見据え、そして未来のために過去にも向き合っているからこそ、この映画には希望や楽観が備わったのだと思います。




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向かって左からデニス・ハーヴェイ監督、ラース・ローヴェン監督


監督:デニス・ハーヴェイ

アイルランド出身の映画監督。短編ドキュメンタリー『The Building and Burning of a Refugee Camp(難民キャンプの建設と焼失)』(24)がスウェーデン映画協会ゴールデン・ビートル賞で短編映画賞を受賞、セザール賞を主催するフランス映画芸術技術アカデミーにより2024年の世界の優れた短編映画の一つに選出されるなど、数多くの賞を受賞している。自身の作品では脚本・監督のほか、プロデュースや編集も務める。初長編作品『I Must Away(立ち去らなければならない)』(23)は移民をテーマにしたエッセイのような作品で、7年をかけ6カ国で撮影された。『ケルト・ユートピア』(25)が長編2作目となる。最新作はアイルランドの非人道的な難民制度を問う短編『The New Policy Regarding Homeless Asylum Seekers(ホームレス難民申請者への新政策)』(25)であり、制度に抵抗する人々へ捧げられている。彼の作品はシネマ・ヴェリテの手法を用いて、卓越した感性で人間を観察し、個人の視点から政治的な問題を問いかけている。欧州映画アカデミー会員、移民に映画制作の手段を提供する映画コレクティブ「ノンシチズン」のメンバーでもある。



監督:ラース・ローヴェン

ドキュメンタリー映画監督、ジャーナリスト、ラジオ・ドキュメンタリーのプロデューサー。世界40カ国以上で劇場公開および映画祭上映された監督作『Fonko』(16)では、急速な社会変化を遂げるアフリカ大陸の複数の都市における現代の音楽シーンを追い、そのルーツを植民地主義との闘いに遡った。『ケルト・ユートピア』は2作目の長編作品である。スウェーデン・ラジオP2のために『Astor Piazzolla, tangons motvalsgeni(アストル・ピアソラ、タンゴの天才)』(21)、『Det sista folkmusikhaket Det sista folkmusikhaket(最後のフォークミュージック・ハケット)』(19)、『Rebetiko』(17)等の音楽ドキュメンタリー番組を制作。彼の作品は音楽、政治、歴史の交差点に注目している。



取材・文:村山章

1971年生まれ。雑誌、新聞、映画サイトなどに記事を執筆。配信系作品のレビューサイト「ShortCuts」代表。




『ケルト・ユートピア』

全国順次上映中

配給:ユーロスペース

© MDEMC & SVERIGES TELEVISION SVT 2025

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