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『ヒンド・ラジャブの声』カウテール・ベン・ハニア監督 希望は、人道支援に携わる人々の中にある【Director’s Interview Vol.586】

『ヒンド・ラジャブの声』カウテール・ベン・ハニア監督 希望は、人道支援に携わる人々の中にある【Director’s Interview Vol.586】

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希望は、人道支援に携わる人々の中にある



Q:本作は少女の死という絶望的な結末(事実)に向かいながらも、赤新月社の方々の想いや言動を映すことで希望も映し出しているように感じました。


ベン・ハニア:その点に気づいてくださったことが本当に嬉しいです。ジェノサイドのさなかに希望をどう捉えるかというのは、非常に繊細な問題です。例えば広島や長崎のことを考えてみればわかりますが、希望というのは何年も経ってようやく見えてくるものです。つまり、歴史という長いスパンで見れば希望は存在するのでしょうが、その場、その瞬間に直面しているのは「死」と「壊滅」でしかありません。


希望は、人道支援に携わる人々の中にこそあるのです。赤新月社の方々は状況が複雑で危険を伴うことを十分に理解しています。それでも、目の前の少女を救いたいがために希望を失わないのです。彼らはヒンドの事件が初めての任務というわけではなく、救急隊員を失う悲劇を何度も経験していました。それほどまでに絶望的な状況にありながら、彼らは不屈の精神を持ち続け、希望を抱き続けているのです。それをそのまま描きたいと思いました。



『ヒンド・ラジャブの声』Ⓒ MIME FILMS - TANIT FILMS


Q:フィクションとドキュメンタリーを組み合わせる手法は、映画にどのような効果を生み出していると思いますか。


ベン・ハニア:私はドキュメンタリー映画の制作から始め、その後、フィクションやモキュメンタリー、そしてフィクションとドキュメンタリーを組み合わせたハイブリッドな形式の映画にも取り組んできました。そのように、ジャンルの境界で様々な実験を重ねてきたからこそ、それぞれの長所を組み合わせ、本作を効果的に語ることができたのではないかと思います。また、そうした経験があったからこそ、自信を持って挑むことができました。


本作がハイブリッドな形式をとっているのは、実話に基づいているからです。実話であればドキュメンタリーという手法も考えられますが、ドキュメンタリーだけでは不十分だと感じました。なぜなら、私にとってドキュメンタリーとは常に「過去の出来事」を扱うものだからです。観客に「ああ、これはもう起きてしまったことなんだ…」「何が起きたのか説明するドキュメンタリーを観ているんだな」と思わせるような作品にはしたくなかった。


この映画には、単なる説明は求めていませんでした。観客にその瞬間に立ち会ってもらうことで、当事者が実際に感じたことを追体験してほしかったのです。そしてそれは、俳優たちがあの瞬間を再演することで可能になったのです。





監督/脚本:カウテール・ベン・ハニア

1977年、チュニジアのシディブジッド生まれ。チュニジア・チュニスとフランス・パリ(ラ・フェミとソルボンヌ大学)で映画製作を学ぶ。短編映画『Sheik's Watermelons』(2018)や『Wooden Hand』(2013)を手がけ、複数の国際映画祭で評価を得る。長編デビュー作『The Challat of Tunis』(2014)は、カンヌ国際映画祭ACID部門のオープニング作品に選出。15カ国以上で配給され、国際的な成功を収めた。次作となる長編ドキュメンタリー『Zaineb Hates the Snow』は、チュニジアとカナダを舞台に6年の歳月をかけて撮影。2016年ロカルノ映画祭で公式上映された。2017年には『Beauty and the Dogs』がカンヌ国際映画祭「ある視点」部門で最優秀サウンドクリエーション賞を受賞。モニカ・ベルッチを主演に迎えた『皮膚を売った男』は、ヴェネチア国際映画祭でプレミア上映され、2021年アカデミー賞長編国際映画部門にノミネートを果たし、続く『Four Daughters フォー・ドーターズ』(23)では、第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、優れたドキュメンタリー作品に贈られるゴールデンアイ賞を受賞。第96回アカデミー賞にて長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた。



取材・文:藤原亮太

CINEMOREの編集部員兼ライター。95年生まれ。西川美和『永い言い訳』をきっかけに映画好きに。近年は、エドワード・ヤン、ジョン・カサヴェテスの映画に夢中。日本のインディペンデント映画を盛り上げていくために日々奮闘中。





『ヒンド・ラジャブの声』

9月4日(金)より新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開

Ⓒ MIME FILMS - TANIT FILMS

配給:スターキャットアルバトロス・フィルム

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