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『クロノス・カイロス』ヘッラ・ウルッポ監督 × プロデューサー:ミカ・ラッティ × 主演:トニ・プロトニ・ヤルヴィネン 映画作りは、砂場遊びのようなもの【Director’s Interview Vol.588】

向かって左から主演:トニ・プロトニ・ヤルヴィネン氏、ヘッラ・ウルッポ監督、プロデューサー:ミカ・ラッティ氏

『クロノス・カイロス』ヘッラ・ウルッポ監督 × プロデューサー:ミカ・ラッティ × 主演:トニ・プロトニ・ヤルヴィネン 映画作りは、砂場遊びのようなもの【Director’s Interview Vol.588】

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長編映画を完成させられるのはタフな連中だけ



Q:ウルッポ監督はミュージシャンとしての活動やミュージックビデオの監督など、幅広い表現を追求してきました。その中で、なぜ本作は映画として表現する必要があったのでしょうか。


ウルッポ:ポップやロックなどの音楽は、展開のテンポが非常に速い傾向にあります。そのため、例えば4分のポップミュージックだと、特定のムードを一つ伝えるのが精一杯という気がするのです。加えて、音楽制作に敬意を表しつつ言うならば、ポップミュージックはあくまでエンターテインメントの一形態です。しかし、別れや耳鳴りを扱った今回の物語は、テーマが大きすぎてポップミュージックの形式には収まりきらない。全力で曲に落とし込もうとしても、上手くいかないのです。だからこそ、本作は映画という形で表現する必要がありました。


そして何よりも、ポップミュージックなら誰にでも作れますが、長編映画を完成させられるのはタフな連中だけなのです。



『クロノス・カイロス』


Q:最後に、本作が日本で公開されることへの思いをお聞かせください。


ヤルヴィネン:まず、こうして日本に来られたことを光栄に思います。日本の皆さんはこの映画をどう受け止めてくれるのか。フィンランドの方々が笑うような場面で、同じように笑ってくれるのか。理解するのが難しく、一筋縄ではいかない映画でもあるので、観客の皆さんの反応が楽しみです。


ラッティ:この映画を作ったこと、日本で上映できることをとても誇りに思います。また、こうして日本の方々と一緒に映画を届ける仕事に取り組めていることを心から嬉しく思います。これは本当に素晴らしいことです。今後もフィンランドと日本での、多岐にわたる協力を続けていきたいと考えています。日本での上映を実現させてくれたチームの皆さんにも、深く感謝しています。


ウルッポ:『クロノス・カイロス』を巡る全ての体験が、私にとってはまるで夢のようです。子供たちと一緒に『となりのトトロ』(88)を数百回と観てきましたが、私はこれまで日本を訪れたことがありませんでした。そんな自分が作った映画が日本で上映されていること自体、夢の続きのように感じられます。これが現実だなんて、本当に信じがたい。


これまでずっとフィンランド語で音楽を作ってきました。そもそも海外へ持ち出そうという意欲もなかったので、国外で自分の表現を展開することもなかった。フィンランド語の音楽こそが、30年にわたる私の表現の形でした。それなのに、初めて作った映画がいきなり東京の映画館で上映されるなんて…。誰かにつねってもらって、これが現実じゃないと気づかせてほしい。それくらい今の状況が信じられないです。


最後に、皆さんに伝えたいことがあります。映画の作り方を知りたいですか?


トトロ』を観てください。答えはすべてそこにあります。






監督/脚本/撮影/編集:ヘッラ・ウルッポ

1973年、フィンランド・ハルヤヴァルタ生まれ。ロックバンド「マイ・カルマ(Maj Karma)」のフロントマンとして1990年代半ばから活躍し、ソロプロジェクト「ヘッラ・ウルッポ&イヒミセット」では全国チャート1位のアルバムを送り出した、フィンランドを代表するミュージシャン。詩人、写真家、作家としても活動するマルチアーティストである。これまで数十本のミュージックビデオで監督・脚本・撮影・編集を一手に担い、独自の映像表現を築いてきた。敬愛するアキ・カウリスマキ監督の『カラマリ・ユニオン』――登場人物のほぼ全員が「フランク」と名乗る作品――に触発され、自らのファーストネームに「フランク」を正式に加えたという逸話を持つ。本作『クロノス・カイロス』が長編映画監督デビュー作となる。





プロデューサー/共同脚本/出演:ミカ・ラッティ

1969年生まれ。詩集、回想録、小説など6冊の著作を持つフィンランドの作家・映画人。フィンランド・カルッキラの映画館「キノ・ライカ」を、映画監督アキ・カウリスマキと共同で運営している。キノ・ライカは映画館、コンサートホール、バーを併設した文化施設として親しまれ、「世界一犬にやさしい映画館」としても知られる。本作では共同脚本とプロデュースを務め、自ら出演も果たしている。俳優としても、本作のほか『遥かな惑星』(2023年、ユホ・クオスマネン監督)、ドキュメンタリー『シネマ・ライカ』(2023年)などに出演。カウリスマキ監督の『希望のかなた』にも顔を見せている。今回の日本公開に際し、生涯初の来日を果たす予定である。





出演:トニ・プロトニ・ヤルヴィネン

フィンランド西海岸の街ラウマを拠点に活動する、映画館運営者、レストラン経営者、イベントプロデューサー、DJ。映画『クロノス・カイロス』では主演を務めるとともに、製作にも参加している。1997年、教師を目指してラウマの教員養成課程に進学。学生時代からDJとして活動を始め、「Protoni」の名で知られるようになる。その後、フィンランド最大級の夏至祭フェスティバル「Raumanmeren Juhannus(RMJ)」の運営に参加し、イベント制作やエンターテインメント事業に携わる。ラウマでは25年以上にわたり飲食・イベント事業を展開し、海辺のレストラン「Rantatalo」などを経営。さらに地元ラウマの3スクリーンの映画館運営にも携わっている。本業の俳優ではなく、映画館、音楽、フェス、飲食といった「人が集まる場所」を実際に作り続けてきた人物であることが、トニのユニークなところだ。『クロノス・カイロス』は本格的な映画主演作。プロの俳優とは異なる、彼自身の人生や土地に根ざした存在感が作品の大きな魅力となっている。



取材・文:藤原亮太

CINEMOREの編集部員兼ライター。95年生まれ。西川美和『永い言い訳』をきっかけに映画好きに。近年は、エドワード・ヤン、ジョン・カサヴェテスの映画に夢中。日本のインディペンデント映画を盛り上げていくために日々奮闘中。


撮影:青木一成





『クロノス・カイロス』

9月11日(金)よりアップリンク吉祥寺、シネマリスほか全国公開中

配給:UPLINK、KUJIRA ROUTE

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