映画祭がもたらす“発見”
Q:映像制作のハードルが下がり、誰でもスマホで動画を作る時代になりました。「映像」を作ることと「映画」を作ることの違いは、応募者の中で意識されているのでしょうか。
荒木:それは、作り手自身が「発見」していくものだと思います。自分の作ったものが「映画」として扱われる体験が、彼らを変えるのです。先日亡くなられた映画評論家のトニー・レインズ氏は、日本映画をはじめアジア映画を世界に紹介した偉大な方でした。彼への追悼メッセージを読むと、「自分たちが作っているものが『映画』だと気づかせてくれた」と語る監督が多くいました。
Q:作り手自身も最初は分かっていないことが多いのですね。
荒木:最初から確固たるビジョンを持っている人はごくわずかです。先ほど名前が挙がった李相日監督や熊切和嘉監督、石井裕也監督などは、最初から自分の道が見えていた人たちなのかもしれない。でも、多くの人はまだ分かっていません。自分が何を創りたいのか、どこへ向かいたいのかを探している段階で応募してくる人が圧倒的に多いため、何かのきっかけで劇的に変わっていくのです。分からない中で作り上げたものが、他者に発見されることで初めて道が定まる。PFFはそのための「場所」だと思います。
今回上映する「PFFプロデュース(旧称:PFFスカラシップ)」の第31作『わたしはわたしのかなしみで』をつい先ほど観たのですが、すごい傑作に仕上がっていました。石田忍道監督は自主制作で2作品を作っているものの、それまで全く映画の勉強をしてこなかった人です。これまでの作品を拝見していて、今回、本当にすごい次元に到達したなと感じています。やはり、人との対話や新たな体験、プロの指導といったものを通じて、劇的に成長し変わっていくのが「若さ」なのだと強く思いました。

『わたしはわたしのかなしみで』石田忍道監督によるPFFプロデュース最新作 2026年/日本/114分/カラー/DCP
そうした経験を積む場所であろうとしているのが、PFFという映画祭ではないかと思います。一度入選した監督とは、ご縁があれば一生のお付き合いになります。そうした関係性の積み重ねの中で、「PFFのまわりには、自分の作品を観続けてくれている人がいる」「自分のことを知っていて、実はちゃんと期待してくれている人がいる」と感じられることは、作り手にとって非常に大事なことだと思います。
Q:一方で、応募者全員が映画監督になりたいわけではないというのが意外でした。
荒木:PFFのスカラシップ(プロデュース作品)でも、製作決定後に辞退した方は、います。人の未来や可能性は予測できません。だからこそ、目標が定まっている人と定まっていない人の作品が入り混じっている状況そのものが面白いのです。