純粋な愛を描けば、言葉なんてなくなる
矢崎:『21世紀の女の子』はどうでした?
金子:『21世紀の女の子』の話ですか・・・。緊張します。
矢崎:いや、面白く見ましたよ。
金子:本当ですか。どうでした?
矢崎:面白かったです。うまいなと思いましたけどね。最初の喫茶店のシーンとかね。
金子:うれしいです。気付いてもらえて。
矢崎:あのシーンだけで、何となく主人公のどこか空っぽな部分がすごい見えましたよね。
金子:うれしい。一番演出に時間がかかったところなんです。エキストラの演技指導に時間をかけすぎて、助監督から怒られるっていう(笑)。
矢崎:あれはすごく大切ですよ。主人公が見たり感じたりするものだから、すごく大事なところだと思います。
金子:今この時代で、『21世紀の女の子』と同じ「ジェンダー、あるいはセクシャリティの揺らぎ」ってテーマを与えられたら、矢崎さんはどんな物語を作るんでしょうね。「ジェンダー」という概念が生み出されていない時に『風たちの午後』を撮った監督が、今こんなに言葉に分類されてる世界をどう切り取るんだろうって、興味があります。
矢崎:映画24区で撮った『1+1=1 1(イチタスイチハイチイチ)』(12)のセリフだけど、「怖いものに名前を付けたがる」っていうのがあったんですよ。だから本当に純粋な愛を描けば、言葉なんてなくなるんじゃないかなと思ってるんだけど。
金子:そうですね、確かに。
矢崎:これだけみんなが名前を付けたがる世の中で、逆にもう一度「怖いもの」を見せたいなとは思いますけど。