興味がなかったデジタルリマスター
ーー金子さんはそもそも『風たちの午後』はご存じでしたか。
金子:私は、知らなかったです。今回デジタルリマスターされるとなって、初めて存在を知りました。
ーー私も知りませんでした。この作品は諸事情あってソフト化もされず、上映もされてなかったのですが、監督自身、いつか再びいろんな人に見てほしいという願いはあったのでしょうか。
矢崎:こんなこと言うとクラウドファンディングに協力してくれた皆さんに怒られちゃうけど、正直言うとデジタルリマスターって興味なかったんですよ。古い映画って、歳月とともに画面が雨のように傷がついて、そういうふうに映画も歳をとるものだと思ってたから。だから死んじゃった有名な監督のリマスターが出たりしても、そんなに興味なかったんですよね。
それに反して、『風たちの午後』のリマスターをやりたいって話を、本当にいろんな人からいただいてたんです。そんな中、今回のリマスターを企画してくれた映画24区の三谷さんが、「この次のステップに行くための滑走路として、リマスターを作りませんか」と言ってくれたんです。21世紀の『風たち』にもう一度挑めるんであれば、いいかなと思ってお願いしました。
ーー今回初めて『風たちの午後』を拝見したんですけど、リマスターしてくださって本当に良かったです。作品を知らないままでいるのと、今見ることができるのでは、全然違うと思います。
金子:そうですよね。
ーー他の作品もそうですが、デジタルリマスターって古さを感じないんですよね。もちろんきれいにリマスタリングしてるというのもあるのですが、それ以上に内容的な古さを感じない。今まさに映画館で公開されている金子監督も参加している『21世紀の女の子』と並べて上映しても、どっちが新しい古いとか全く感じないと思いました。