記憶に新しい『カメラを止めるな!』の大ヒットに続き、同作品に関わったENBUゼミナール・SPOTTED PRODUCTIONS・MOTION GALLERYによるチームが贈る映画『あの日々の話』は、カラオケボックスで行われるサークル打ち上げという、なんの変哲もない状況で繰り広げられる密室会話群像劇だ。前半のくだらない会話が後半になるにつれ回収されていき、さらにそれが冴え渡っていく様は圧巻ですらある。舞台から映画化への変換に際し、緻密なアップデートを仕掛けた玉田真也監督への、約8,000字にわたるロングインタビュー。お楽しみください。
Index
- 映画化への道
- 役者に「あて書き」されたキャラクター
- 映画化で意識したのは「動線」
- 面白い演技を切り撮る
- 計算された3幕構成
- 舞台版が活きてくる群像劇
- 視線を誘導させる、編集作業
- 映画化のポイントは群像会話劇
映画化への道
Q:原作は舞台作品ですが、映画化された理由を教えてください。
玉田:僕がもともと映画好きで、一緒に舞台をやってる山科圭太くん(細川先輩役)に「映画を作りたいんだ」って話をしてたんです。山科くんは映画美学校の監督コースの出身で、もともとは映画畑なんですよ。それで話が盛り上がっているところに、近藤強さん(社会人学生役)から短編映画の製作を持ちかけられたんです。そこで近藤さんに、舞台「あの日々の話」の映画化ってどう?って言ってもらったんです。
でも、その直後は動きがなくて一回たち消えたんですが、再び山科くんが声をかけてくれて、彼の人脈で映画製作の人を集めてもらったんです。最初は短編のつもりだったんですが、どんどん話が盛り上がって、いつの間にか長編映画製作になってました。
Q:今回の企画と脚本は、山科さんと一緒に作られたんですよね。
玉田:そうですね、企画が立ち上がる時から人を集めてもらったりとか、舞台を映画脚本にするときに若干変えてる部分もあるのですが、その辺を相談したりしてました。
Q:山科さんは役者として出演もされていますが、映画監督志望だったんですか。
玉田:もともとはそうですね、学生時代は監督を目指してたみたいです。
Q:玉田監督も、映画好きなんですね。
玉田:はい、もともと映画が好きで、舞台はむしろ高校生のときまでは見たこともなくて、大学で演劇サークルに入った友達に誘われて、それで初めて見始めたんです
Q:なるほど、それがきっかけで演劇のほうに傾倒していかれたんですね。
玉田:そうですね、演劇を始めてからは、そのまま続けてきて今に至るみたいな感じです。
Q:映画化すると言っても、実現するのはかなり難しいと思いますが、どういった経緯で完成まで漕ぎ着けたのでしょうか。
玉田:まずは短編化ってところから話が始まったので、最初は本当すごく小さな規模だったんですよ。全編iPhoneで撮ろうとしてた時もありますね。
Q:そうなんですね!?
玉田:実は本編でも、iPhoneで撮っているシーンがあるんですけどね(笑)。企画段階の時は、15分くらいの実験作みたいな感じで、iPhoneで撮ろうという話が出てたんです。でも、その後、撮影スタッフとして中瀬慧さんに入ってもらったら、彼が、ちゃんと撮影して長編映画化した方が良いよって言ってくれたんです。同じく、MOTION GALLERY STUDIOのプロデューサーの鈴木徳至さんに入ってもらってからは、長編映画化に向けていろんなことが一気に広がっていきました。
同時並行で製作費を集める必要があったので、僕が所属している事務所に応援してもらったり、MOTION GALLERYの大高健志さんにご相談して、クラウドファンディングで製作費を集めました。ENBUゼミナール・SPOTTED PRODUCTIONSにも仲間に加わっていただき、撮影を乗り切って何とか完成させたんです。
そして、東京国際映画祭(以後表記、TIFF)に出品して、スプラッシュ部門に選ばれてからはいろんなことが決まっていきました。