リスペクトから始まるスタッフィング
Q:衣装やヘアメイク、8ビットのアニメーションやデザインなど、ビジュアルインパクトの全てが圧倒的です。優秀なスタッフが参加してくれたのもあると思いますが、監督はどうやって自分の意図をスタッフに伝えたのでしょうか。
長久:そもそもスタッフィングの第一条件として、僕自身がリスペクトしていて大好きな人に声をかけているんです。その方々に、この映画で何を伝えたいのかって、最初はディテールではなく目的を話すんです。そうやってやりとりした後で初めて、ディテールの調整をしていく作業をしていますね。
この辺はCMプランナーだった経験が生かされていると思います。信頼してやってもらった方が結構いいものが上がってくるんですよ。例えば、これはすごく細かいことなんですが、実は映画の中で死ぬ人は皆グレーの服を着ていたりするんです。そういうコンセプトの遊びみたいなものを、みんなでやっていきましたね。意味が合っていれば、ディテールが多少ずれてても大丈夫なんです。その辺の思想の共有をスタッフみんなでしていきました。
Q:映画監督の中には、自分のビジョンがブレないように全て事細かに演出をする方もいますが、長久監督の場合は、製作中に自分のビジョンとずれるようなことはなかったのでしょうか。
長久:ほぼないですね。やっぱり信頼している人に声をかけることが大事で、これは役者さんも同じです。本当に好きだから出演して欲しい!の一点張りでお願いして(笑)、それで出演してもらえたのも大きかったですね。音楽も、衣装やデザインに関しても、全部そういう頼み方をしてるんです。好きだから相談しやすいんですよ。だからずれなかったのかなと思います。
Q:今はこうして、すごく気さくに話してくださっていますが、監督は現場ではどんな感じだったのでしょうか。
長久:もう、このままですね。「わぁーすごい!良い!ヤバい!」とか言って僕が現場で一番キャッキャしてました(笑)。スタッフに「こんな現場ないですよ。フェスみたいですね」って言われてました(笑)。
Q:なるほど。長久監督と話していると、何だか分かる気がします(笑)。
長久:シーンが多いので、スタッフの作業量が半端ないんですよ。これまでの映画を変えるものをみんなで作っていて、そしてみんなのおかげですごく良いものが出来ていることを、ちゃんと監督として表明しなければって、思っていたんです。でも本当に楽しかったんですけどね。