1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. いっぱい映画を見てきましたが、一番好きなのはこの作品です(笑)『ウィーアーリトルゾンビーズ』長久允監督【Director’s Interview Vol.31】
いっぱい映画を見てきましたが、一番好きなのはこの作品です(笑)『ウィーアーリトルゾンビーズ』長久允監督【Director’s Interview Vol.31】

いっぱい映画を見てきましたが、一番好きなのはこの作品です(笑)『ウィーアーリトルゾンビーズ』長久允監督【Director’s Interview Vol.31】

PAGES


必要だったサラリーマン時代



Q:映画との出会いや映画を撮りたいと思ったきっかけを教えてください。


長久:二十歳ぐらいまでサックスをやってて、ジャズミュージシャンかスカバンドのどちらかをやりたいと思ってたんです。毎日血を流しながら練習してたんですけど、これ以上は上手にならないなって自分で天井が見える時があって、、そう感じた時に、同じ情熱を何かに向けなければと、強引に映画の専門学校に申し込み書を出したんです。


Q:それは大学生の時にですか。


長久:はい。大学3年生の時ですね。その頃って『シティ・オブ・ゴッド』(02)とか、新藤兼人の新作『ふくろう』(04)とか、『エレファント』(03)とか、その辺の映画が上映されていた時なんですよ。映画の枠を超えた表現が出てきていた時期で、それがすごく面白かったんです。今まで見てきたハリウッドやピクサーの映画にはない、枠にとらわれない自由な表現が出てきて、映画って音楽に近いんだなって思ったんです。それで専門学校に通いながら映画を見まくって、映画の勉強を始めました。その後、映像関係で就職活動もしたのですが、全部落ちて、今勤めている広告代理店だけ受かったんです。これもご縁かなと思い、そこで一旦映画は諦めて、働き始めました。そこから12~13年はずっと広告の仕事をしていましたね。




Q:とにかく広告の仕事だけをされていたのですか。


長久:そうですね。映画のことはたまに思い出しましたが、もうサラリーマンとして広告をやっていたので、映画を作れるとは思っていなかったんです。ある時、広告の仕事が辛くなって体調も崩してしまい、ふと入った目黒シネマで『青春の殺人者』(76)を見たんです。そこで、「あぁ、俺は何をやっているんだ。映画を作る使命感で生きてきたんじゃないのか」って、その時に思い出してしまったんです。それから有給休暇を取って『そうして私たちはプールに金魚を、』を作り始めました。


Q:以前SNSで、『そうして私たちはプールに金魚を、』に関する製作応援の投稿などを見たことがあるのですが、つい最近のことのような気がします。ここまであっと言う間ではなかったですか。


長久:そうなんですよ。ここまですごい駆け足でしたね。二つの球を立て続けに豪速球で投げて、骨が折れても気づいてないみたいな状態ですもん(笑)。


Q:なるほど、すごい例えですね(笑)。作品自体がすごく振り切っていて勢いもあるので、今回が長編一作目って感じがしないですよね。


長久:広告の仕事をしていた12~13年間は、映画を撮れるとは思っていなかったんです。でもその間にいろんな映画を見ては、「俺だったらこういう風に作るし、そっちの方が絶対面白くなるな。」って思ったり、こういう映画がもっとあるべきだとか、映画自体の存在理由とか、果てには自分が映画を作る使命感みたいなものまで、色々と考えていました。それは作ってないからこそ湧き出てきたわけで、そういう意味ではサラリーマンをやっていて良かったんです。また、そういう考える時間があったからこそ、実際に映画を作るときも「こういう映画が作りたい!」って明確だったんだと思います。


また、広告の仕事で食わず嫌いなくいろんな表現をさせられていたことも良かったですね。あの12~13年間は経験値を貯め続けた時間でした(笑)。


Q:今後はどういう映画を作っていきたいですか。


長久:前提として、僕はダメな人間っていないと思っているんです。それは子供に関してもそうだし、今回の映画で子供に対して悪者に描いてしまった大人も、ダメな人間だとは思っていません。みんなそれぞれ頑張っていると思うんですよね。いや、頑張っていなくたっていい。そういうみんなをダメでもいいんだよって、優しい視点で見つめる映画を作り続けたいなと思っています。




また、僕はいろんな題材が好きなんです。SFで撮りたいものもあるし、ラブストーリーのシナリオも書いてますし、色んなセリフをいっぱい書き溜めているので、お楽しみに!ということですかね。


Q:ぜひ見たいです!


長久:もしかしたら日本じゃないかもしれないし、マーケットはいろいろ考えていたりします。


Q:では最後に、このインタビューを読んでくださっている皆さんにメッセージを。 


長久:この映画を作ったのは、色々悩んでいるティーンエイジャーのために、何かできないかと思ったのが動機なんです。例えば、クラスでいじめられている子とか、悩んでいる子、クラスの端っこの一人のために届けばいいなと思って作っているので、そういう子たちにうまく届くと嬉しいです。もちろん、大人になってしまった人が見ても、失っていることに気づいてもらえたりすると思いますし、いろんな方に楽しんでもらえると嬉しいです。



『ウィーアーリトルゾンビーズ』を今すぐ予約する↓








脚本・監督:長久允 MAKOTO NAGAHISA

1984年8月2日生まれ、東京都出身。大手広告代理店にてCMプランナーとして働く傍ら、映画、MVなどを監督。そして2017年、脚本・監督を務めた短編映画『そうして私たちはプールに金魚を、』が第33回サンダンス映画祭ショートフィルム部門にて日本人史上初めてグランプリを受賞した。今作が長編映画デビュー作となる。



取材・文: 香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。





『ウィーアーリトルゾンビーズ』

2019年6月14日(金)全国公開


脚本・監督:長久 允

出演:二宮慶多 水野哲志 奥村門土 中島セナ

佐々木蔵之介 工藤夕貴 池松壮亮 初音映莉子

村上淳 西田尚美 佐野史郎 菊地凛子 永瀬正敏


(c)2019“WE ARE LITTLE ZOMBIES”FILM PARTNERS

PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. いっぱい映画を見てきましたが、一番好きなのはこの作品です(笑)『ウィーアーリトルゾンビーズ』長久允監督【Director’s Interview Vol.31】