脚本・監督を務めた短編映画『そうして私たちはプールに金魚を、』が、第33回サンダンス映画祭ショートフィルム部門にて日本人史上初めてのグランプリを受賞した長久允監督。今回の長編映画デビュー作『ウィーアーリトルゾンビーズ』は、膨大な情報に溢れながらも、見る者をグイグイ引き込み魅了していくパワフルな作品に仕上がっている。長編デビュー作とは思えない完成度で本作を作り上げた長久監督に話を伺った。
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自分自身のテーマでもあった「ゾンビ」
Q:この映画では、今の子供たちの閉塞感と絶望を前面に出しながらも、子どもたちへの強烈な愛を感じました。前作に続き主人公を子供達にしたのはなぜですか?
長久:前作『そうして私たちはプールに金魚を、』では15歳を描いたのですが、今回は思春期に入る直前の13歳を描いています。社会の常識や偏見などに対してフラットな視点を持っているという意味で、僕は子供たちが好きなんです。あと、僕自身の精神年齢が13歳くらいなんで(笑)、僕が自然に書く言葉が彼らに近いっていうのが大きいですね。
Q:13~15歳というと中学生ですが、監督にとって中学生とは。
長久:中学生の時は僕の人生で一番色々あった時期でして、そこで思考が一番成長したと思っています。複雑にこじらせて色んなことを考えていた経験が、大人になっても使える思想のタネになった気がしているんです。中学時代は人間にとって大事だなって思いますね。
Q:前作でも「私たちはゾンビだ。」というセリフがあります。そういう意味ではテーマがシンクロする部分もあるかと思いますが、その辺は意識されているのでしょうか。
長久:僕の中では、会社員として無理やり働いていた自分がすごくゾンビ的だなって思っていまして、それが自分のテーマでもあったんです。一方で、ゾンビといえども頑張ってもいるしエモーショナルな部分もあったので、その自分を素直に表現する手段として、「ゾンビ」というモチーフをすごく大事にして使った感じですね。
前作・今作とゾンビの出ないゾンビものを2本作ったので、次に3本目を作って「概念ゾンビもの三部作」って言えたらいいなとは思うんですけど(笑)、でも、もうかなり出し切っちゃっいました(笑)。