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鬼才、井口昇が作りあげた傑作青春映画『惡の華』。原作と完全にシンクロした監督の思いとは?【Director’s Interview Vol.42】

鬼才、井口昇が作りあげた傑作青春映画『惡の華』。原作と完全にシンクロした監督の思いとは?【Director’s Interview Vol.42】


片腕マシンガール』(07)『電人ザボーガー』(11)『ゴーストスクワッド』(18)など、知る人ぞ知る傑作を手掛けてきた鬼才、井口昇。これまで公開が比較的小規模な作品が多かったため、映画ファン以外への認知度は低いかもしれないが、近年ようやくその才能がメジャー映画でも発揮されるようになった。遂に最新作『惡の華』が全国規模で公開される日がやってきたのだ。原作は人気マンガ家・押見修造の同名作品。地方都市に暮らす少年が、既存の価値観をとことん否定する少女に翻弄される、予測不能な傑作青春マンガだ。この作品と出会った井口は8年に及ぶ苦闘の末、遂に映画化に成功、自身のフィルモグラフィで最大の公開規模の作品として世に送り出した。原作者との運命的な出会い、驚くほどマンガとシンクロした自らの体験、そして若いキャストたちとの熱い現場・・・すべてを語ってもらった!


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衝撃の出会い!「空気を吸うかのように理解できる」原作



Q:文句なしの傑作ですね!


井口:ありがとうございます!


Q:私も押見修造さんの「惡の華」は元々好きだったので、井口監督が参加されると聞いたときは興奮しました。まずこの企画がどのように成立したのかをお聞かせください。


井口:8年ぐらい前、連載中に原作を拝読しまして「なんて面白いマンガなんだ!」とすごく衝撃を受けました。普段僕はマンガや映画を見ていても、面白いけど自分の人生との接点を感じない作品も結構多いんです。でも「惡の華」に関しては「空気を吸うかのように全部理解できる。自分の人生で見てきたものと、こんなにリンクするマンガを初めて読んだ!」っていうくらいに共感し、衝撃を受けたんですよね。


自分自身も自主映画とかで、ちょっとエキセントリックな女性と弱い男性の話をずっと描いてきたので、これは自分で映像にしたい!と素直にそう思いました。


それで居ても立ってもいられなくて、知り合いの編集者の方を通じて押見先生をご紹介いただいたんです。それで押見先生と食事をしながら話したんですけど、驚いたのは押見先生は20年以上前の僕のインディーズ時代の自主映画を見てくれていたんです。しかも共通の知り合いもいたりして、それですごくシンパシーを感じてしまいました。




Q:押見さんもずっと井口監督に「惡の華」を映画化して欲しいと思われていたそうですね?


井口:先生にもそういう風に言ってもらえたので、かなり共感し合えたと思いましたし、人としての共通点もありました。実は僕は女の子に生まれたかったという願望があって、押見先生も同じような事を考えてらっしゃったそうです。そういう人ってなかなかいないですし、大体そういう話をするとちょっと「変な人」って思われるので(笑)。初めてそういう話を素直にできる方とお会いできたなと思いました。


それで「これを映画にしないで俺は何をするんだ!」という風にまで思うようになりまして、企画書にして色々な会社に持ち込んだんですけど、なかなか話が進まなかったんです。でも4、5年経っていくうちに、今回プロデューサーをやってくれた涌田(秀幸)さんとも知り会えて、紆余曲折あったんですけど、こうやって実現することができました。


Q:監督が原作を読んだ時に心底共感できたというのは、やっぱり主人公の春日ですか?


井口:そうです、まずは春日ですね。思春期の頃を振り返ると「自分は変態なんじゃないか?」ってずっと悩んでいたので・・・実際に変態の要素もあるんですけど(笑)。


そういうことをストレートに悩んでいた時期があったので、主人公の苦悩にこんなに共感できるということがなかなかない体験でした。あと仲村さんというキャラクターも、僕が学生時代、学校に馴染めなかった部分ですごく共感できました。


Q:今回の脚本には、アニメ作品などで活躍する岡田磨里さんが参加されていますが、井口監督はご自分で脚本を書かれるイメージが強いので意外でした。


井口:作品に対して客観的な位置の人がいた方がいい、というのがプロデューサーさんとの共通認識だったので、脚本家さんにお願いすることにしました。ただ男性だとちょっと男主観になりすぎちゃうんじゃないかと思って、涌田さんの提案で岡田さんにお願いしました。


岡田さんはアニメのお仕事が多い方ですが、その作品には毒もありながら、すごく繊細な部分もある。だから良い相乗効果で面白くなるんじゃないかと思いました。


Q:岡田さんとの仕事で一番効果的だと感じた部分は?


井口:コミックスで11巻もある原作の中から、どのセリフやシーンをピックアップしていくかというのは岡田さんが女性ならではの感性で決めているなと思いましたね。


自分がもし脚本を書いたとしたら、ラストの女性同士の掛け合いはカットしたと思いますが、そこを入れたりしていたので、やっぱり岡田さんならではだと思いました。でも女性だからなのか、女性キャラに厳しいなと思うところもあって。それは押見先生のご意見もあったり、僕がもうちょっと柔らかいニュアンスにしたいと思って、変えさせてもらった部分もありました。




Q:原作では、主人公である春日の中学生から高校生時代までを時系列で描いていますが、映画では高校生の春日の回想のような形式をとっています。


井口:みんなで脚本をどうするか考えた時に、映画はだいたい2時間前後のものなので、ストーリーが時間軸のままだと、ちょっと構造として難しいんじゃないかという意見が出ました。例えば中学生パートのクライマックスが終わって、そこから高校生パートが始まるというのは、映画として作りづらいんじゃないかと。それで現在と過去が交錯する構成になりました。


ただ編集に入ってからも、実は脚本にあった時間軸とちょっと変えたりとかして、みんなで色んなパターンを考えて悩み抜きました。最終的には春日の思春期からの脱出、成長物語が際立つような構成を目指しました。


Q:押見さんも脚本の段階でかなり色々なアドバイスをされたそうですが、具体的にどんな所を?


井口:まず仲村さんの言葉遣いですね。仲村さんはこの言い方はしない、春日のことを「君」って言ったり。他でも、語尾がこうだと仲村さんとは別人の言い方になってしまう、というのがあって。


押見先生がおっしゃっていたんですけど、仲村さんは極端な内容のセリフが多いので、ちょっとしたニュアンスで全然違うキャラクターになってしまうと。そこは押見先生がちゃんと見極めて、キャラクターがずれそうになったら「ここはこうした方がいいんじゃないでしょうか」という風にアドバイスを頂きました。



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