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『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』精緻なバランス感覚で戦車映画にあらゆるエンタメ要素を盛り込んだ傑作

『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』精緻なバランス感覚で戦車映画にあらゆるエンタメ要素を盛り込んだ傑作


悲惨なだけが戦争映画なのか?



 『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』はロシア映画史上最高のオープニング記録を樹立。観客動員数800万人、最終興行収入は40億円超えという成績で、2019年全ロシアNo.1映画となった作品だ。


 同作は第二次大戦でドイツ軍と戦った戦車兵イヴシュキンが主人公。彼はドイツ軍との戦いの中で捕虜になってしまうが、そこから新たな戦いが始まる…。


 本作の監督・脚本を担ったアレクセイ・シドロフは、ソ連時代から作られてきた同国の戦争映画のほとんどが、いつも重苦しく、悲惨であることが気になっていたという。彼はそのような過去の枷を取り払い、エンターテインメントとして、共感し楽しむことができる戦争映画を目指したという。


 しかし、その考えは、大変な危うさを孕んでいる。戦争映画に万人受けする痛快な演出や展開を持ち込むことは、戦場の凄惨な非人間性を覆いかくし、ひいては戦争を賛美する内容に堕す危険もあるからだ。しかし、同作は類まれなバランス感覚で戦争映画の重厚さとエンタメとしての痛快さを同居させることに成功しているのだ。




 まず最も巧みなのが物語の設定だ。捕虜になった主人公は、ドイツ軍の訓練のために3人の仲間とともにソ連製のT-34戦車で逃げ回りながら標的になることを強要される。しかし、反骨精神の塊のようなイヴシュキンは、その演習の最中に腕利きの戦車兵たちと戦車もろともの脱走を計画する…。まるで『大脱走』(63)のような血沸き肉躍る設定だが、実はこれ、1965年のソ連制映画『鬼戦車T-34』でも描かれた設定で、監督は同作を大いに参考にしたようだ。


 この設定に戦車兵たちのアウトロー感と個性が際立つキャラクター性を盛り込み、ロバート・アルドリッチの作品、特に『特攻大作戦』(67)などと同質の心地よい男くささを醸し出すことにも成功している。しかも、男しか出てくる余地がないと思われる戦車映画に、敵役であるドイツ軍人との通訳という設定でヒロイン・アーニャをごく自然な形で登場させるのも心憎い。




 戦争映画では足手まといのように描かれることが多い女性キャラだが、本作のアーニャは、思い切った行動で主人公たちを導く展開も用意されており、その場面には拍手を送りたくなった。


 しかし、これらのドラマを盛り込むだけでは、本作を傑作に押し上げることにならなかっただろう。巧みな設定とストーリーを下支えしているのは、戦車同士の戦闘のリアルさにある。



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