2019.12.06
マット・リーブス監督の奮闘
監督のマット・リーヴスとJ・J・エイブラムスは13歳の時から一緒に短編を作っていた仲で、エイブラムスから依頼された時も軽い気持ちで引き受けたそうだが、当時のBAD ROBOTは『LOST』の制作で忙しく、なかなか脚本が上がってこなかったとのこと。
そもそも撮影日数も39日と極めて少なく、制作現場は非常に大変で修羅場の連続だったようだ。しかしその方が俳優陣に不安感を与えることにつながり、演出上はよかったのかもしれない。
『クローバーフィールド』 (C) 2008 by PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.TM, (R) & Copyright (C) 2013 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.
また、本作のクリーチャーデザインはネヴィル・ペイジという、ハリウッドでコンセプトデザインという職業を根付かせたベテラン。インダストリアルデザインを本業としていたが、エンターテイメントの世界に興味を持ち、ハリウッドのメジャースタジオをクライアントに持つようになったという経歴だ。その後、ジェームズ・キャメロン監督『アバター』(09)、スピルバーグ&J・J・エイブラムスコンビの『SUPER 8』(11)、リドリー・スコット監督『プロメテウス』(12)など、巨匠たちとのコラボレーションが続いていく。
J.・J.・エイブラムスはゴジラにインスパイアされて『クローバーフィールド』を作った。『パラサイト 半地下の家族』でカンヌ国際映画祭パルムドールやアカデミー賞を受賞し、今や世界的巨匠に上りつめた韓国のポン・ジュノ監督も日本の怪獣ものに影響を受けて『グエムル-漢江の怪物-』(06)をつくった。
『グエムル-漢江の怪物-』では、CG合成の難易度が格段に上がる昼間の設定にしたり、家族愛を描くなど新しいアプローチを取り、さすがの攻めの内容で、韓国で特大ヒットさせた。
世にあるモンスター映画の多くは、数多くのCG会社を潰れさせないために制作されるという一面があるとかないとか聞くが、現代の作家たちは、巨悪や自然など抗いがたい驚異の象徴を怪獣に見て取り、多くの観客を虜にしていくのだ。
文:江口航治
映像プロデューサー。広告を主軸に、メディアにこだわらず幅広く活動中。カンヌはじめ国内外広告賞多数受賞し、深田晃司監督『海を駆ける』(18)やSXSWへのVR出展など、様々な制作経験を経たプロデューサーならではの視点で寄稿。「note」でも投稿中。
『クローバーフィールド/HAKAISHA』
Blu-ray: 1,886 円+税/DVD: 1,429 円+税
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
(C) 2008 by PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.TM, (R) & Copyright (C) 2013 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.
※ 2019年12月の情報です。
(c)Photofest / Getty Images