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『エイリアン』SF映画屈指の傑作ホラーを作った天才たちとは
拡張を続ける『エイリアン』ユニバース
リドリーが『プロメテウス』(12)から始まる『エイリアン』の前日譚を作ろうと考えたのは、自分が『エイリアン』世界の創造者という自負があったからだろう。ダン・オバノンを筆頭に複数の脚本家が共同作業や改稿に関わり、“エイリアン”のデザインはH・R・ギーガーが手がけたが、スクリーンに映し出されるすべては監督であるリドリー・スコットのフィルターを通して取捨選択されたものなのだ。
興味深いのは、『プロメテウス』と『エイリアン:コヴェナント』(17)が、創造主にまつわる物語であること。人類を創ったのは、アンドロイドを作ったのは、そしてエイリアンを作ったのは何者か?という探究は、『エイリアン』を、ひいては映画を創るのは誰なのか、という命題ともシンクロする。
『エイリアン』当時のリドリーはまだ映画は二作目の新人監督だったが、あの手この手で自分のこだわりを貫いたことは多くの証言が語っている。当初の脚本ではリプリーもノストロモ号の乗組員が全滅するバッドエンドだったものを、追加予算をもぎ取ってリプリーが生還するエンディングを撮り直したのもリドリーの功績だ。あのラストがなければ、シリーズを通じてリプリーが登場することはなかっただろう。
『エイリアン』(C)2014 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
リドリー自身の弁によれば、『エイリアン:コヴェナント』の後にもう2本の続編を構想しており、2本目のラストが『エイリアン』第一作の直前に繋がるのだという。ちなみに『エイリアン』の主人公エレン・リプリー(シガニー・ウィーヴァー)は『エイリアン:コヴェナント』の時点では、地球に暮らす12歳の少女ということになる。
オリジネイターを自認するリドリーの復帰で、これまでに発表された派生作品の扱いが宙に浮いてしまった感はある。リドリーの構想では『プロメテウス』から『エイリアン』までが大きなストーリーで繋がっており、自分が手がけていない『エイリアン2』(86)以降は正史としてカウントされないという。突然、引退していた大先輩が現れて「鶴の一声」ならぬ「神の一声」がくだされたのだ。。
とはいえ、ジェームス・キャメロンが監督した『2』にはリドリーも賛辞を送っている。『エイリアン3』(92)は監督のデヴィッド・フィンチャーが製作時には苦労が絶えなかったと回想しているし、ジャン=ピエール・ジュネ監督の『エイリアン4』(97)を低評価する人も少なくない。しかしどの作品も『エイリアン』という傑作を道標にして、果敢に新たな「エイリアン」像に挑んでいる。現在ペンディングになってしまったニール・ブロムカンプの『エイリアン2』続編企画も、想いは同じだろう。。
また『エイリアンVSプレデター』(04)のようなスピンオフ的トンデモ企画でさえも、ちゃんとリドリーの“エイリアン”を受け継ごうというリスペクトがあった。同作には『エイリアン2』『エイリアン3』のランス・ヘンリクセンも出演しており、スピンオフでありながら正史としても成立するものを、という作り手の気概が感じられる。
確かなのは、リドリー・スコットの『エイリアン』が傑作だったからこそシリーズ化され、エレン・リプリーは苛酷で波乱に満ちたその後を生き、シガニー・ウィーヴァーはリプリーを演じ続けた。
映画は生き物であり、歴史であり、時代の空気を反映しながら姿形を変えていく。 “エイリアン”はすでに創造主リドリー・スコットの手を離れ、もっともっと大きな存在になっているのかも知れない。
文: 村山章
1971年生まれ。雑誌、新聞、映画サイトなどに記事を執筆。配信系作品のレビューサイト「ShortCuts」代表。
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