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『スモーク』ポール・オースター原作のミニシアターヒット作、作品をめぐる人々に想いを馳せる

『スモーク』ポール・オースター原作のミニシアターヒット作、作品をめぐる人々に想いを馳せる

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ポール・オースターのクリスマス・ストーリーを日本の製作者が映画化



 アメリカのインディペンデント映画界で活躍していたウェイン・ワンが監督だが、アメリカだけではなく、日本の製作会社、NDFもからんでいる。トークショーでは日本側のプロデューサーである井関さんが映画化のいきさつを語ってくれた。


 脚本を書いたのはアメリカの知性派作家、ポール・オースターで、原案となったのは彼が「ニューヨーク・タイムズ」に発表した短編小説「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」。オースターは原稿依頼を受けた時、すぐには物語が浮かばなかったが、やがて、いきつけのタバコ屋の店主をモチーフにした話を思いつき、彼をめぐるクリスマス・ストーリーを書き上げた。


 するとそれを読んだウェイン・ワンから連絡があり、そこに映画化の可能性を見出したという。会って話すうちに彼らの間には友情がめばえ、映画化を真剣に考えるようになった。そして、ワンが別の仕事で東京に行った時、井関さんと会った。その時、監督が持っていたのは新聞に掲載されたクリスマス・ストーリーの切り抜きだけ。しかし、オースター・ファンだった井関さんはこの企画にすぐに興味を持った。


 井関さんは製作を考え始め、最初はフランシス・コッポラ率いるゾエトロープとの合作の話が進むが、途中で立ち消えになる。その後、アメリカ側の製作会社が見つかり、日本と共同制作で映画を作ることになった。




 シナリオはロバート・アルトマン監督に見てもらい助言をもらったそうだ(BFIのオースターのインタビューによれば、編集後の映画にもアルトマンは助言を出し、「実はこの映画はアルトマン作品でもあるんだよ」と彼は語っている)。  


 最終的にはハーヴェイ・ワインスタイン率いる映画会社、ミラマックスも入ることで、公開が決まった。今では世紀のセクハラ問題でハリウッドを追放になったワインスタインだが、トークショーの時は、まだ、このスキャンダルが発覚しておらず、井関さんは(明るく)彼のエピソードも振り返った。


 「当時、彼は“シザーハンズ”と呼ばれていて、完成した作品にやたらとハサミを入れることで知られていました。『スモーク』に関しては、カメラアングルのことで、ワンとワインスタインが対立していました。ワンは最初の方では引いたアングルを中心にしていて、だんだん人に寄っていく、という手法をとっていたのですが、ワインスタインは最初があまりにも引きすぎる、というのです」


 最終的にはアングルを少し調整することになったようだが、それでも、監督の狙いは伝わる。冒頭では登場人物たちから離れていたカメラは、最後のクリスマス・ストーリーのくだりになると、これ以上ないくらい近づき、オーギー(ハーベイ・カイテル)やポール(ウィリアム・ハート)の顔の接写となる。そうすることで人物たちの心の距離が近づく様子を監督は表現したかったようだ。『スモーク』はブルックリンに住む人々の心の交流の物語で、いくつかの挿話を経て人物たちが絆を深めていくからだ。


 製作費集めや映像編集に関する葛藤は、当然あったようだが、現場の雰囲気はこれ以上などほどなごやかで、「それが画面にも出ていると思います」と井関さんは語っていた。



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