『スモーク』あらすじ
1990年ブルックリン―。 14年間毎日同じ時間に同じ場所で写真を撮り続けるタバコ屋の店主、オーギー(ハーヴェイ・カイテル)。 最愛の妻を事故で亡くして以来書けなくなった作家、ポール(ウィリアム・ハート)。 18年前にオーギーを裏切り昔の男と結婚した恋人、ルビー(ストッカード・チャニング)。 強盗が落とした大金を拾ったために命を狙われる黒人少年、ラシード(ハロルド・ペリノー)。 それぞれの人生が織りなす糸のように絡み合い、そして感動のクライマックスへと向かっていく……。
Index
- 90年代の大ヒット作、同じ劇場で20年後にリバイバルが実現
- ポール・オースターのクリスマス・ストーリーを日本の製作者が映画化
- ポール・オースターと映画の関係
- ストーリーテラー、ウェイン・ワン監督の手腕
- 人間の心のひだを見せるワン監督
90年代の大ヒット作、同じ劇場で20年後にリバイバルが実現
95年10月、東京の恵比寿にあったミニシアター、恵比寿ガーデンシネマで1本のアメリカ映画が公開された。ウェイン・ワン監督の『スモーク』(95)である。ニューヨークのブルックリンにある小さなタバコ屋を舞台にしたささやかな作品だったが、多くの観客をひきつけ、約半年のロングラン興行となった。その間、9万人(興行収入1億4千万円)を動員し、この劇場としては歴代2位の成績となっている。
そして、約20年後の16年12月、同劇場で『スモーク』のデジタルリマスター版が公開された。同じ劇場といっても、経営は別の会社(ユナイテッド・シネマ)に変わり、名前もYEBISU GARDEN CINEMAとなった。4年間閉館だったが、15年に再オープンとなったミニシアターである。
そして、この劇場の代表作『スモーク』をもう一度、上映したい。そんな関係者たちの熱い思いに支えられ、20年ぶりにリバイバルが実現した(配給担当のアーク・エンタテインメントはかつて恵比寿ガーデンシネマを経営していた日本ヘラルド映画の主要メンバーによる会社)。
この映画の新しい旅立ちを目撃したい。そんな思いにかられ、『スモーク』リバイバルの初日、劇場に出かけた。
観客に話を聞いてみると、「この劇場にかつてはよく通っていましたが、そんな中でも『スモーク』は特に好きな映画でした」とある女性が答える。また、「初めて見たのは九州の劇場でしたが、ぜひ、また見たいと思い、仕事もかねて大阪から来ました」とコメントを寄せてくれた男性もいた。
この日、上映後にこの映画の製作総指揮を担当した井関惺(さとる)さんと字幕担当の戸田奈津子さんのトークショーも行われた。戸田さんは好きな映画の1本だったそうで、「こういう映画を見ていただけるチャンスが、今もあるなんて、本当にうれしいですね」。
戸田さんの言葉を受けて、司会者が「みなさん、今日の映画、いかがでしたか?」と問いかけると、場内から大きな拍手がわき起こった。