プロフェッショナリズムの塊、シシー・スペイセク
タイトル・ロールのキャリー・ホワイトを演じたのは、シシー・スペイセク。実は彼女、『スター・ウォーズ』(77)のレイア姫を演じる可能性があったことをご存知だろうか?
一見何の共通項もない『キャリー』と『スター・ウォーズ』だが、浅からぬ関係がある。『スター・ウォーズ』監督のジョージ・ルーカスは、壮大なスペース・オペラを撮影するにあたって、まだ色のついていない無名の俳優を起用しようと考えていた。当然、新人発掘のためのオーディションを行うべきなのだが、ルーカスは超恥ずかしがり屋のシャイ・ボーイ。自分一人ではロクな審査ができないと考え、兄貴分と慕っていたブライアン・デ・パルマに頼み込み、『キャリー』と合同で『スター・ウォーズ』のオーディションを開催してもらったのだ(その縁もあって、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の一部シーンをデ・パルマが手伝ったというのは、マニアには有名な話)。
妄想を膨らませれば、キャリーを演じたシシー・スペイセクがレイア姫を、レイア姫を演じたキャリー・フィッシャーがキャリーを演じる可能性もあった、ということ!よくよく考えてみれば両作品ともに、「サイキック・パワー」と「フォース」という超能力をモチーフにした映画でもある。シシー・スペイセクがフォースを使ったら、あっという間に帝国軍が全滅しそうですが。
『キャリー』(c)Photofest / Getty Images
しかし最終的に、シシー・スペイセクがキャリー役を演じることになったことは、正しい選択だった。この映画における彼女は圧巻である。オープニングから素っ裸のシシー・スペイセクが、初潮を迎えて半狂乱になるシーンの凄まじさよ!ロッカールームにいる少女の多くが裸になることをためらっていたものの、デ・パルマが彼女のヌード・シーンを見せるや否や、全員が覚悟を決めてヌード撮影に臨んだ、という逸話もアリ。
そう、シシー・スペイセクはとにかくプロフェッショナルだった。キャリーになりきるため、意図的に他の俳優との付き合いを避けてトレーラーにこもったり、豚の血を浴びた姿のママで3日間の撮影を過ごしたり。ラストシーン、地面から手が伸びてスー(エイミー・アーヴィング)の腕を掴むのは、スタント・ダブルではなくシシー・スペイセク本人だ。その演技が認められて、彼女はこの年のアカデミー主演女優賞にノミネート。『歌え!ロレッタ愛のために』(80)では、念願のアカデミー主演女優賞を受賞し、名実ともに実力派女優となったのである。