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『グエムル -漢江の怪物-』にみる格差社会と、怪物の正体とは?

(C) 2006 Chungeorahm Film. All rights reserved.

『グエムル -漢江の怪物-』にみる格差社会と、怪物の正体とは?

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韓国の現実と戦う弱者たち



 1960年代から、「漢江の奇跡」と呼ばれる大きな経済成長を成し遂げてきた韓国だが、2000年代に入ると、雇用条件の悪化や、経済格差問題が目立ってきた。その事情を考えると、本作に登場する“グエムル(怪物)”とは、表向き繁栄する韓国が隠そうとする、裏側の現実を表現したものであるように感じられる。パク一家らは、そんな現実の犠牲になりがちな“貧しい人々”なのではないか。それを裏付けるように、真面目に努力しつつも、就職氷河期によって職を得られなかった弟が、自分の受けてきた境遇への怒りを、グエムルへの火炎瓶攻撃に込めているように感じられるシーンが、せつなくも熱い。



『グエムル -漢江の怪物-』(C) 2006 Chungeorahm Film. All rights reserved.


 本作で同情をもって描かれるのは、パク一家のように、貧しい側になってしまった者たちである。カンドゥは、父親が育児放棄して飢えさせられた過去があった。いまはそれを深く悔やんでいる父親の説明によると、栄養が足りなかったため、カンドゥはいまもぼうっとしていて寝てばかりいる人物になってしまったのだという。本作に登場する、川べりに住んでいる孤児は、かつてのカンドゥの姿でもある。彼が、カンドゥによって、お腹いっぱいにご飯を食べるラストシーンは、助け合うことの素晴らしさを表現する反面で、そのような格差を生み出してきた自国への怒りがこもっているように感じられる。そう、このテーマは、そのまま『パラサイト 半地下の家族』へと受け継がれているのだ。


 愛すべき個性的なキャラクターたち。政府からの逃亡を描いたサスペンスなどの娯楽演出の見事さ。暗示される社会問題。そして、本作で噴射される薬剤を美的に映し出すシーンに代表される、優れたアート性。本作のどれをとっても、監督の天才的な手腕が光っている。多方向に輝きを放つ、ブリリアンカットのダイヤモンドのような映画。それが本作であり、ポン・ジュノ監督作品なのである。



文: 小野寺系

映画仙人を目指し、さすらいながらWEBメディアや雑誌などで執筆する映画評論家。いろいろな角度から、映画の“深い”内容を分かりやすく伝えていきます。

Twitter: @kmovie



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『グエムル -漢江の怪物-』

DVD発売中

価格:1,886円 (税抜)

発売元/販売元:(株)ハピネット   

(C) 2006 Chungeorahm Film. All rights reserved.

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