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アル・パチーノ、ジョン・カザール出演『狼たちの午後』は、なぜこんなにも偉大な映画であり続けるのか?

(c) 2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

アル・パチーノ、ジョン・カザール出演『狼たちの午後』は、なぜこんなにも偉大な映画であり続けるのか?

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『狼たちの午後』あらすじ

うだるような暑さのブルックリンの午後。楽観的で無計画な二人の男が銀行を襲う。リーダーのソニー(アル・パチーノ)とパートナーであり、後に問題を引き起こすサル(ジョン・カザール)。取り囲む警官隊、熱狂する群衆、騒ぎ立てるマスコミ、そしてピザの配達人までもが、事態を限りなくエスカレートさせていく。


Index


『狼たちの午後』は銀行強盗の難しさを悟らせる



 いつの頃からか、「銀行強盗」なる言葉を耳にしなくなった。犯罪映画において資金を強奪する手段として常套だった「銀行強盗」は、監視カメラなど防犯システムの強化・進化によって(ほぼ)淘汰されたからだ。調べてみると、日本国内ではバブル崩壊後の不況から事件の件数は増加。金融機関や郵便局を狙った「強盗」件数は、平成13年がピークだった。その数は237件。土日・祝日を除いた営業日で概算すると、ほぼ1日に1件の割合で事件が発生していたことになる。


 ところが、平成14年以降は100件台と減少傾向に転じている。平成29年には、年間の発生件数が26件にまで減少した。これは、金融機関の防犯に対する意識・努力によるものだ。また、検挙率96.3%という、日本の警察による高い検挙率も「強盗」の件数を減少させた功績のひとつ。犯罪者側にとっても、被害者と対面するリスクがあり、強奪する金額が大きくなればなるほど、計画に対するコストも多大。「銀行強盗」は割に合わない犯罪となり、代わって現在では「特殊詐欺」と呼ばれる犯罪が増加傾向にあるという。


『狼たちの午後』予告


 同時に、「銀行強盗」での<立て籠もり>行為に対する成功率の低さも挙げられる。日本でも、ハイジャックやテロ事件に対応するために特殊急襲部隊(SAT)が再編され、<立て籠もり>を鎮圧する術は格段に向上している。実際の銀行強盗事件を題材にした『狼たちの午後』(75)でも、主人公たちが銀行員や客を人質に立て籠もるが、克明に描かれているのは検挙されてしまうまでの顛末だ。筆者が「銀行強盗の成功は難しい」と思い知らされたのは、テレビで観たこの映画と、その同時期に起こった1979年の三菱銀行人質事件(高橋伴明監督『TATOO<刺青>あり』(82)の題材)の顛末にある。


 後年、デンゼル・ワシントン主演の『インサイド・マン』(06)やブルース・ウィリス主演の『ダイ・ハード』(88)や『ホステージ』(05)をはじめ、建物での<立て籠もり>から如何に脱出するのかを、奇抜なアイディアによって実践させた映画が数多製作された。しかし、そのどれもが現実的には不可能に思えるような方法で、映画的な「嘘」=「演出」によってのみ<立て籠もり>からの脱出を成功させていた。


 時代の変化によって(今を描いた)犯罪映画における「銀行強盗」場面は、姿を消しつつある。日本では「アポ電」強盗と呼ばれる一般家庭を急襲する犯罪が増加傾向にあるなど、強盗のスタイルも変化している。そういう意味でも、現実的に「銀行強盗は成功しない」と観客に印象付けた『狼たちの午後』は偉大なのだと言える。



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