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『コーラスライン』ミュージカルの舞台と映画。互いに補完しあい、進化し続けるオリジナル作品

(c) Photofest / Getty Images

『コーラスライン』ミュージカルの舞台と映画。互いに補完しあい、進化し続けるオリジナル作品

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オリジナルの作曲家が映画版の新曲も手がける


 

 映画と舞台ミュージカルの密接な関係は、このようにいくつものパターンがあるが、では、舞台からの映画化では、どんな改変がなされるのか。最も気になるのは「曲」だろう。 


 『コーラスライン』では、オリジナルの舞台にはなかった2曲が追加されている。思春期のめざめの告白が激しいダンスにつながる「サプライズ・サプライズ」は、映画化当時、流行の兆しをみせ始めたブレイクダンス、ヒップホップダンスあたりの要素を取り入れている。舞台初演時からの時の流れを感じさせるアレンジだ。


 もう1曲の「レット・ミー・ダンス・フォー・ユー」は、舞台版では「音楽と鏡」という曲に相当する。「音楽と鏡」は、「コーラスライン=バックダンサー」のオーディションに参加した、かつてのトップクラスの女優キャシーが、自分には「音楽と鏡、踊るチャンスがあればいい」と訴えながら踊るナンバー。このキャシーは、オーディションで審査する演出家ザックの元恋人という設定で、映画版では、より観客の感情移入を高めるため、元恋人のために踊りたい(レット・ミー・ダンス・フォー・ユー)という部分が強調された。広い観客に向けた大作映画らしく、恋のドラマを濃厚にしたと思われる。


 ここで重要になってくるのが、新曲に違和感を与えないこと。映画版の新曲を手がけたのは、オリジナルも担当したマーヴィン・ハムリッシュなので、曲としての新しさは加味されたものの、作品の世界観を壊すことはなかった。マーヴィン・ハムリッシュは、『スティング』『追憶』などの映画音楽の作曲家として有名だが、舞台でもこの「コーラスライン」や、「グッバイガール」(これも映画の舞台ミュージカル化)など多くの仕事を残している。ちなみにハムリッシュは、アカデミー賞、トニー賞、グラミー賞、エミー賞、ゴールデングローブ賞、ピューリッツァー賞のすべてを受賞した人物である(他にこのパターンは、「王様と私」「サウンド・オブ・ミュージック」などの作曲家、リチャード・ロジャースしかいない)。



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