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『ウエスト・サイド物語』暗黒の時代から完璧主義へ。20世紀を代表する振付家の最高傑作

(c)Photofest / Getty Images

『ウエスト・サイド物語』暗黒の時代から完璧主義へ。20世紀を代表する振付家の最高傑作

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『ウエスト・サイド物語』あらすじ

ニューヨークのダウン・タウン、ウエスト・サイド。移民の多いこの街では、二つのグループが何かにつけ対立していた。リフをリーダーとするヨーロッパ系移民のジェット団と、ベルナルドが率いるプエルトリコ移民のシャーク団だ。ある日、ベルナルドの妹・マリアはシャーク団のメンバーに連れられて初めてのダンスパーティに出かける。マリアはそこで一人の青年に心を奪われる。しかし、それは許されない恋だった。彼の名はトニー、対立するジェット団の元リーダーだった……。


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マイケル・ジャクソンにも影響を与えた振付



 ミュージカルの大前提は「突然、登場人物が歌い、踊り出す」ことなのだが、タモリが何度も語っているように、このスタイルに違和感をもち、受け入れない人もいる。その意味で『ウエスト・サイド物語』は、違和感の最たる作品だろう。ストリートにたむろする不良グループが突然、踊り始めるのだから。


 NYマンハッタンを上空からの俯瞰でとらえるオープニング映像が、バスケットボールコートの広場に寄っていく。バックに流れる音楽に合わせて指を鳴らし続けるのは、リーダーのリフを中心にしたポーランド系ら白人の「ジェット団」の若者たちだ。遊んでいる少年からバスケットボールを奪うなど、ここまではとくに違和感はない。しかし広場から通りに出た一団には、やがて日常の動きとは明らかに違う「ダンス」の動きが加わり、対立するプエルトリコ系の「シャーク団」との争いへとなだれ込んでいく。そのステップにはクラシックバレエの基本も取り入れられ、冷静に観れば異様な光景かもしれない。


 しかし、ベルナルド(ジョージ・チャキリス)を中心としたシャーク団の3人が左脚のバットマン(脚を大きく上げる動き)を見せた瞬間が、その後、何十年も作品のイメージとして定着したように、街の不良グループとクラシックバレエという異種の組み合わせが特殊な化学反応を生み、観る者に未体験のカタルシスを与えることにもなった。『ウエスト・サイド物語』はミュージカルの新たな地平を切り開いたのである。


マイケル・ジャクソン「今夜はビート・イット」PV


 このオープニングの「ジェット・ソング」の間に何度か、ジェット団のリフが「うせろ」というセリフを発する。原語では「Beat It」。マイケル・ジャクソンの名曲と同じである。マイケルの「今夜はビート・イット」のPV(プロモーション・ビデオ)が『ウエスト・サイド物語』に影響を受けて制作されたのは有名な話。ストリートギャングの抗争という設定はもちろん、ボス同士が決闘しそうになる描写は『ウエスト・サイド物語』のクライマックスにそっくりである。マイケルは「BAD」のPVでも『ウエスト・サイド物語』の「クール」の振付や、前述のジョージ・チャキリスら3人の左脚バットマンの動きを引用している。


マイケル・ジャクソン「BAD」PV


 こうして後世に多大な影響を与えた『ウエスト・サイド物語』の振付を手がけたのは、20世紀を代表するダンサーで振付家のジェローム・ロビンスだ。




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