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『月の輝く夜に』「地獄の業火に焼かれようとも愛し合うことが望みだ」名セリフの宝庫となった傑作

(c)Photofest / Getty Images

『月の輝く夜に』「地獄の業火に焼かれようとも愛し合うことが望みだ」名セリフの宝庫となった傑作

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シニカルで、ふざけたような会話も映画のテンポに貢献



 『月の輝く夜に』の冒頭、ロレッタがプロポーズされたことを知った父親コズモが、眠っている妻のローズを起こす。そのやりとりからしてユニーク。


コズモ「起きろ」


ローズ「誰が死んだの?」


 突然起こされる。すなわち、急な知らせだと瞬時に察する。セリフ自体は深刻なのに、これが軽やかに交わされることで、ユーモアを帯びる。この感覚が『月の輝く夜に』には通底しているのだ。


 幼なじみのジョニーから求婚されたロレッタに対し、母のローズは、こんな忠告も与える。


ローズ「彼を愛しているの?」


ロレッタ「いいえ」


ローズ「それはよかった。愛したら最後。男に振り回されるから」



『月の輝く夜に』(c)Photofest / Getty Images


 とにかくローズが出てくるシーンには名セリフが多く、ロレッタに求婚したジョニーともこんな会話がある。


ローズ「男はなぜ女を追うの?」


ジョニー「神様は男の肋骨を取って女を作りました。それを取り返したいのです。男は胸の中の足りないところを持っている人を求めているんです」


 その他にも全編、シニカルだったり、ふざけているようで哲学的だったりと、名セリフの宝庫。それらが全体の軽快なテンポを形成しているのが『月の輝く夜に』なのである。


 登場人物の会話の妙が最高レベルに達するのは、クライマックスのキッチンで、監督のノーマン・ジュイソンもこのシーンはセリフの間合い、人の出入りなど最も演出に苦心したことを告白している。それだけに会話のタイミング、沈黙の時間など完璧である。一同の思いが交錯し、気まずい状態で会話が止まってしまう瞬間、ロレッタの祖父がポツリと口にする。


「誰かジョークを言わないか」


 この、ややズッコケるようなセリフのタイミングも、恐ろしいほど的確だ。



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