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『月の輝く夜に』「地獄の業火に焼かれようとも愛し合うことが望みだ」名セリフの宝庫となった傑作

(c)Photofest / Getty Images

『月の輝く夜に』「地獄の業火に焼かれようとも愛し合うことが望みだ」名セリフの宝庫となった傑作

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その後、怪優スターになった「ニコケイ」が放つロマンチックなセリフ



 基本的に『月の輝く夜に』は、マザコン気味のジョニー、浮気しているコズモが示すとおり、男性キャラの立場はよろしくない。その中で唯一、ロマンチックな名セリフを託されるのがロニーである。パン屋で働き、片腕を失ったロニーは鬱屈した人生を送っていたところ、突然目の前に現れたロレッタへの愛を抑えきれなくなる。他のキャラクターが家族、親戚など旧知の間柄なのに対し、ロニーだけが新たな参入者ということで、その純粋さはさらに際立つ。


ロニー「愛するものが2つある。それは君とオペラだ。その2つを一緒に味わえたら、君のことは忘れる」


ロニー「雪は完璧だ。星も完璧だ。でも僕たちは違う。愛に苦しみながら人生を終える。僕の部屋へ行こう」


ロニー「君と愛し合うことが望みだ。たとえ地獄の業火に焼かれようとも」


 オペラ好きとはいえ、ロニーのセリフは大げさなまでにロマンチックである。興味深いのは、自己主張が強く、個性的なイタリア系ファミリーのキャラクターの中で、最も純粋で、屈折感も抱えたこのロニーを、ニコラス・ケイジが演じている点だ。



『月の輝く夜に』(c)Photofest / Getty Images


 ニコラス・ケイジは、この『月の輝く夜に』の4年後の『ワイルド・アット・ハート』(91)、そしてアカデミー賞主演男優賞に輝いた『リービング・ラスベガス』(95)、『フェイス/オフ』(97)などアクの強い役が代表作となり、現在は、私生活の言動も含め、ある種の「怪優スター」的存在で映画ファンを夢中にしている。そのニコラスをスターに押し上げた作品のひとつが、現在のイメージとまったく違う『月の輝く夜に』なのである。今となっては、そのギャップも大きな見どころだ。


 当初、スクリーンテストでスタジオ側は彼の起用を止め、ピーター・ギャラガーを考えたが、ロレッタ役のシェールがニコラスを強力にプッシュし、出演が実現した。義手のロニーを演じるためにニコラスが参考にしたのは、フリッツ・ラング監督の古典的名作『メトロポリス』(27)の狂気の発明家ロトワングだったという。


 日本語タイトルの『月の輝く夜に』も美しい響きだが、原題の「Moonstruck」も、これまた作品全体のテーマをロマンチックに表現していて感心する。「月の満ち欠けによって、正気を失った」人々が、常軌を逸した行動の末に本当の自分を取り戻す。そんな人生のテーマを、これほど軽快に楽しく、共感たっぷりに描いた作品は、そんなに多くない。一度観た人は、満月の魔法にかかったように、この映画を名セリフとともにずっと記憶し続けるのだ。



文:斉藤博昭

1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。



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