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『それでも夜は明ける』追い風を受け歴史を塗り替えたオスカー受賞作

『それでも夜は明ける』追い風を受け歴史を塗り替えたオスカー受賞作

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残酷なシーンに込めたもの



 タランティーノは『ジャンゴ 繋がれざる者』で、奴隷に対する非道な仕打ちを、過酷で目を背けたくなるような描写で描いた。しかも、最大の黒人蔑視語である「ニガー」という言葉を劇中では多用している。そのことでタランティーノは、大きな論争を呼び批判を浴びることになったが、劇中で描かれたそれらいくつかのことは、歴史的な事実でもある。


 本作のスティーヴ・マックイーン監督も、同じように過激には描いているが、上手く加減して描いているように思える。同じ人間に対してなぜそこまでできるのであろうか?と思わせるくらいの残酷な行為でありながらも、目を奪われてしまう芸術的なシーンとして作りだしているのだ。



 それは、ソロモンが首を縄で縛られ木に吊るされたシーンに集約されているだろう。実は現在でも嫌がらせとして縄だけを木に吊るすことがあり、幾度もニュースとなっている。まさに黒人奴隷時代の悪を象徴とする場面だ。


 そんな場面をマックイーンは時間を割いて丹念に描いている。首を吊られているソロモンの後ろでは黒人の少年たちが無邪気に遊び、周りの田園風景は非常に美しく描かれる。恐ろしい風景が日常となってしまったそのシーンは、見るものの心を揺さぶってくる。


 見るに耐えない残酷なシーンを、あえて美しくのどかな中で描くことで、逆説的に恐怖を浮き彫りにする。マックイーンのこの非常に優れた演出手腕も、アカデミー賞を受賞した要因の一つかもしれない。



文:杏レラト<あんずれらと>

雑誌「映画秘宝」(洋泉社)を中心に執筆。著書『ブラックムービー ガイド』(スモール出版)が発売中。



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(c)Photofest / Getty Images

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