『それでも夜は明ける』あらすじ
1841年、ニューヨーク州。ソロモン・ノーサップは生まれながらの自由黒人で、音楽家だった。妻子とともに、白人を含む多くの友人に囲まれ、順風満帆な生活を送っていた。しかし、ある夜、ノーサップは二人組の男たちに薬漬けにされ、昏睡したまま奴隷商に売られる。自分は自由黒人だと必死に訴えるが、無駄な抵抗だと悟るのに時間はいらなかった。そして名前も人間としての尊厳も奪われ、奴隷として大農園主フォードに買われていく。それでも農場では、その有能さを認められ、温厚なフォードに気に入られるノーサップだったが…。
Index
『ジャンゴ 繋がれざる者』からの追い風
オスカー受賞作『それでも夜は明ける』(13)には、受賞への追い風が最初から吹いていた。しかもその追い風は非常に強力だった。
本作を語るうえで欠かせないのが、前年に公開された『ジャンゴ 繋がれざる者』(12)である。反逆的で銃の腕の立つ奴隷が、妻を取り戻すため非道な男に戦いを挑む物語。マカロニウェスタンとブラックスプロイテーション仕立ての、クエンティン・タランティーノ監督作だ。その年のアカデミー作品賞にノミネートされ、脚本賞と助演男優賞を受賞した。
『ジャンゴ 繋がれざる者』予告
さらには、エイブラハム・リンカーン大統領を描いた、スティーヴン・スピルバーグ監督作の『リンカーン』(12)。こちらもアカデミー作品賞にノミネートされ、主演のダニエル・デイ=ルイスが主演男優賞を受賞した。リンカーンの物語ゆえ、奴隷解放宣言にまつわるエピソードが盛り込まれている。
他にも、『それでも夜は明ける』にも出演しているキウェテル・イジョフォーとジム・カヴィーゼルが共演した『Savannah』(13/日本未公開)や、後に『ムーンライト』(16)に出演するアシュトン・サンダース出演の『The Retrieval』(13/日本未公開)などもあり、ちょっとした黒人奴隷映画ブームが起きていた。
そんな中で『それでも夜は明ける』は、主役と監督が黒人という意味での「黒人映画」として、アカデミー賞作品賞を受賞するという快挙を成し遂げ、アメリカ映画史を塗り替えたのだった。