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『ドラゴン・タトゥーの女』女性が男性優位社会を打ち砕く、痛快なフェミニズム的寓話

(c) 2011 Columbia Pictures Industries, Inc. and Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

『ドラゴン・タトゥーの女』女性が男性優位社会を打ち砕く、痛快なフェミニズム的寓話

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“男性優位主義の象徴”ジェームズ・ボンド=ダニエル・クレイグ



 男性優位の社会構造を暴き、女性蔑視と暴力を糾弾する映画において、主人公ミカエル役にダニエル・クレイグが起用されたのは注目に値する。なぜなら彼は、女性蔑視の権化と言うべき『007』シリーズの、6代目ジェームズ・ボンドを拝命した俳優だからだ。


 『007』映画における女性は単なる性的対象と見なされ、ボンドに使い捨てされてしまう存在。ダニエル・クレイグは、まさに悪しき男性優位主義の象徴だ。そんな彼が、『ドラゴン・タトゥーの女』では常にリスベットをサポートする立場に回り、セックスでも主導権を握られてしまう(リスベットが常に騎乗位であることに注目!)。この映画では、完全に男女の立場が逆転しているのだ。



『ドラゴン・タトゥーの女』(c) 2011 Columbia Pictures Industries, Inc. and Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.


 だが物語はラストで、違った様相を見せ始める。すっかりミカエルに夢中になってしまったリスベットを差し置いて、彼は長年の愛人であるエリカの元に戻ってしまうのだ。またも男性に裏切られ、傷つけられてしまうリスベット。幸せそうなミカエルを横目に、バイクで走り去っていく彼女の哀しき後ろ姿よ!


 ちょっと待て。一見すると「愛する男に振られちゃった、メンヘラ・ガールの失恋話」に過ぎないが、コレって深読みすれば「女性の社会的立場は改善されてきてはいるものの、まだまだ差別は横行している」と言う現実を暗喩しているんじゃないか?最後の最後で、「女性が男性優位社会を打ち砕く、痛快なフェミニズム的寓話」が、「男性優位主義が女性を打ち砕く、現実を照射した社会映画」に変貌したのではないか?


 これは、ぜーんぶ筆者の妄想である。異論反論もありましょう。しかし、サスペンスというフォーマットを隠れ蓑にして、あらゆるテーマを乱反射し続けてきたフィンチャーであれば、それくらいの芸当はやってくれるはず。筆者はこの暴論が正しいと、今でも固く信じているのである。



文:竹島ルイ

ヒットガールに蹴られたい、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」主宰。



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『ドラゴン・タトゥーの女』

ブルーレイ発売中 ¥2,381+税

発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

(c) 2011 Columbia Pictures Industries, Inc. and Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

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