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『ドラゴン・タトゥーの女』女性が男性優位社会を打ち砕く、痛快なフェミニズム的寓話

(c) 2011 Columbia Pictures Industries, Inc. and Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

『ドラゴン・タトゥーの女』女性が男性優位社会を打ち砕く、痛快なフェミニズム的寓話

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『ドラゴン・タトゥーの女』あらすじ

スウェーデンを揺るがせた財界汚職事件の告発記事を書きながら名誉棄損裁判で敗訴したミカエルは意気消沈の日々を送っていた。ある日、彼のもとにスェーデン有数の財閥ヴァンゲルの元会長ヘンリック・ヴァンゲル老人から家族史編纂の依頼が舞い込む。実はヘンリックの真の目的は40年前に起きた親族の娘ハリエット失踪事件の真相究明だった。ヴァンゲルはハリエットが一族の誰かに殺害されたと信じていた。40年前に一族が住む孤島から何の痕跡も残さず消えた少女。成功の陰に隠された一族の血塗られた過去に気づくものの手がかりの掴めないミカエルは、一族の弁護士から天才的な資料収集能力の持ち主であるとして、ある人物を紹介される。リスベットという名の、顔色が悪く、拒食症患者のように、がりがりに痩せた女。この小柄な女の肩口から背中にかけて、龍の刺青(ドラゴン・タトゥー/ルビ)が異彩を放っていた。意外なことに彼女はこの事件に異様な関心を示す。そして彼女はハリエットの日記に記された聖書にまつわる数字が、ロシアの国境付近で未解決のままとなっている連続猟奇殺人事件と関連があることを突き止めるのだった…。


Index


サスペンスを主題にしないサスペンス映画の巨匠



 デヴィッド・フィンチャーはこれまでのフィルモグラフィーで、数多くのサスペンス映画を手がけている。筆者の独断と偏見で、作品にラベル付けしてみよう。異論・反論は受け付けませんので、念のため。


エイリアン3』(92)SF映画

セブン』(95)サスペンス映画

ゲーム』(97)サスペンス映画

ファイト・クラブ』(99)サスペンス映画

パニック・ルーム』(02)サスペンス映画

ゾディアック』(07)サスペンス映画

ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(08)ファンタジー映画

ソーシャル・ネットワーク』(10)青春映画

『ドラゴン・タトゥーの女』(11)サスペンス映画

ゴーン・ガール』(14)サスペンス映画


 彼が監督と製作総指揮を務めたテレビドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」(13〜18)も、野心家の下院議員があらゆる権謀術数を駆使して、最高権力者へとのし上がっていくポリティカル・サスペンス。同じく監督・製作総指揮を手がけた『マインドハンター』(17〜)は、FBI捜査官がプロファイリング手法を確立するまでを描いたクライム・サスペンスだ。


『ドラゴン・タトゥーの女』(c) 2011 Columbia Pictures Industries, Inc. and Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.


 ほんの少しの例外を除いて、デヴィッド・フィンチャー作品はサスペンスだらけ。もはやこのジャンルの巨匠である、と言い切ってしまってもいいほど。だが不思議なのは、これだけの数を扱っているにも関わらず、サスペンスそのものが主題となっている作品は少ない、と言う事実である。


 “サスペンスの神様”サー・アルフレッド・ヒッチコックは、ただ純粋に観客を楽しませんとするエンターテイナーだった。彼にとってサスペンスは、手法であり主題そのものだったのである。『北北西に進路を取れ』(59)しかり、『』(63)しかり。しかしフィンチャーは、サスペンスというフォーマットを隠れ蓑にして、あらゆるテーマを乱反射し続けてきた。彼にとってサスペンスとは、ストーリーを語るための容器にすぎない。



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