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『SKIN/スキン』“見た目”に依存する私たちへ――感動実話に潜む、差別への警鐘

『SKIN/スキン』“見た目”に依存する私たちへ――感動実話に潜む、差別への警鐘

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「重さ」に終始しない、普遍性とカタルシス



 元々『SKIN/スキン』は、自らの過去を悔い、16カ月に及ぶタトゥー除去手術に挑んだレイシストを追ったドキュメンタリー『Erasing Hate』(11)を観たガイ・ナティーヴ監督が、劇映画化を企画したところから始まったという。だが、資金繰りに苦労し、まずは短編を自主制作。これが絶賛され、アカデミー賞短編映画賞にまで輝いた。


 日本でも、つい先日まで無料公開されており、SNSを中心に大いに話題を集めたため、思い当たる方もいるだろう。ちょうど「ブラック・ライブズ・マター」が米国から全世界に広がっていた時期でもあり、非常にタイムリーだったこともあるだろうが、差別的な父親の背中を見て育った白人の少年(演じているのは『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』(17)の天才子役ジャクソン・ロバート・スコットだ)と、父親がリンチされた黒人の少年が、狂気に染まっていく姿を描いた衝撃的な物語は、長編とも強く結びついている。


 周りの人間が、純粋無垢な子どもたちを変えてしまう――。これは、カルト集団から脱会した女性がトラウマに苦しむ『マーサ、あるいはマーシー・メイ』(11)や、過激思想にのめりこんだ少年を描いた『その手に触れるまで』(19)、インドで起こった史上最悪規模のテロ事件を描いた『ホテル・ムンバイ』(18)、或いは、殺人を犯してしまった青年の葛藤を描く『悪人』(10)、逃亡犯の改心を見つめた『しゃぼん玉』(17)など、世界各国の様々な映画にも共通するテーマといえる。




 「環境が人生を変えてしまう」という点にまで広げれば、『シティ・オブ・ゴッド』(02)、『MOTHER/マザー』(20)など、さらに多くの作品が関連に上がってくるだろう。愛に触れ、組織を抜けようとするつくりは、ギャング映画やヤクザ映画にも近い(現に、主人公は「拾ってくれた“親”への恩返し」という言葉を口にする)。


 このように、第一印象はヘビーなイメージを与えがちだが、本作は普遍的なドラマを中核にした良作。独自性と社会性、人間性が上手く融合している。再生のプロセスが冒頭から提示されている点も親切で、暴力性や悲劇性は極力抑えられている。もちろん悲痛な描写はあるのだが、より多くの人々に届けるべく、細かな気配りがなされているように感じられる。


 ブライオンだけの視点に終始せず、彼を“転向”させようとする反ヘイト団体の運営者、ダリル・L・ジェンキンス(マイク・コルター)の物語を同時進行させるアプローチも、作品全編にかすかな“希望”をもたらしている。「後悔でいっぱいだ」と絞り出すブライオンに対し、ダリルがかける「そこが出発点だ」というセリフは、救済の言葉として、観る者の心にも突き刺さることだろう。


 本作は危機的状況から更生を果たしたレイシストの実話であり、いうなればハッピーエンドだ。『SKIN/スキン』は、前述したように「問題提起」をしっかりと行いながらも、意外なほど軽やかな部分も併せ持っている。骨太な映画ではあれど、善に向かうカタルシスを常に忍ばせているのだ。


 突き放すのではなく、共に歩んでいく――。本作に流れる“安心感”は、言うなればブライオンに愛を与えるジュリーや、支援者となるダリルの存在の象徴。映画自体が主人公をサポートする空気感は、殺伐とした世界を描きながらも、優しさがにじんでいる。



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