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『アンタッチャブル』キャリアの再起をかけた3人が邂逅した、ギャング映画の傑作

(c)Photofest / Getty Images

『アンタッチャブル』キャリアの再起をかけた3人が邂逅した、ギャング映画の傑作

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ショーン・コネリーの不遇



 “名優”という言葉で語られることの多いショーン・コネリーも、当時はキャリアの低迷期にあった。ジェームズ・ボンド役に対するイメージが強いため、映画ファンからは何を演じても「ボンドっぽい」と揶揄されていた時期だったからだ。その低迷ぶりは、ボンド役として出演した『007 ダイヤモンドは永遠に』(71)から10年以上経過した1983年に公開された『ネバーセイ・ネバーアゲイン』で、再びボンド役を(半ば嫌々に)演じていたことからも窺える。


 『ネバーセイ・ネバーアゲイン』=「次は二度とない、なんて言わないで」という、コネリーの妻の言葉をタイトルにしている点で既に皮肉な作品なのだが、ボンドのイメージを払拭したかったというコネリーの想いを、3代目ボンドのロジャー・ムーアは次のように語っている。「日本で記者たちがトイレにまで追いかけて来て、写真を撮られた時、彼はボンドを降りる決心をした。ショーンは、自らが作り出した“ジェームズ・ボンド”という怪物に恐怖を覚えたんだ」



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 ボンド役のイメージを払拭したかったショーン・コネリーだが、『アンタッチャブル』で演じたジミー・マローンが凶弾に倒れる場面には不満があったのだという。最初のテイクで目に破片が入ってしまったコネリーは、病院へ搬送される騒ぎに。デ・パルマによると、腹を立てたコネリーが「ボンドは撃たれたことなんてないんだ!」と言ったとか、言わなかったとか。どちらにせよ、この映画で演じた聡明でダンディなベテラン警官役に、ボンドのイメージを重ねたファンはいなかったはずだ。


 一方、ロバート・デ・ニーロとブライアン・デ・パルマは、自主映画時代からの知り合いという仲。1963年に製作したデ・パルマの初長編作品『御婚礼/ウェディング・パーティ』(69)では、無名時代のロバート・デ・ニーロが、独特の重みある台詞回しで今と変わらない怪演ぶりを見せている。しかし、時は流れ、デ・ニーロは『ゴッドファーザーPARTⅡ』(74)で第47回アカデミー賞の助演男優賞を、『レイジング・ブル』(80)では第53回アカデミー賞で主演男優賞に輝く大物俳優に成長していた。


 当時のデ・ニーロは、役によって外見を変える<デ・ニーロ・アプローチ>と呼ばれた独特の役作りでも知られ、『アンタッチャブル』で17年ぶりに組むことになったデ・パルマに対しても、長期の役作り期間を要求。また、法外なギャラも要求した。実際、デ・ニーロはこの映画のために体重を増やし、髪の生え際まで剃り、カポネが贔屓にしていた仕立て屋を探し出し、カポネの愛用していたシルクの下着を身に付けるなど、アル・カポネになりきっている。その効果は観ての通りの圧巻ぶり。



 ところが、現場のロバート・デ・ニーロは台詞を覚えて来ず、メイク中は何度もデ・パルマと本読みを繰り返すほど、やる気を見せなかったのだとか。しかし、映画の中のデ・ニーロには、そんな片鱗すらも感じさせない。テイクによって異なる演技をすることに対しても、デ・ニーロに不安を覚えたデ・パルマだったが、撮影されたフィルムを見て、彼が全体のトーンを考えながら演じていることを悟り、「さすがデ・ニーロ」と唸ったという。


 結果的に、第60回アカデミー賞で助演男優賞に輝いたのはショーン・コネリーだった。これは、コネリーの長い俳優生活で初めての栄誉ある大きな賞でもあった。デ・ニーロが法外なギャラを求めたため、コネリーのギャラが削られたことを、当時ショーン・コネリーと同じエージェントだったドルフ・ラングレンが述懐している。つまり、当時のコネリーはデ・ニーロと天秤にかけられた時、ギャラを下げられる側だったのだ。それほど、キャリアは低迷していたのである。


 受賞時、ショーン・コネリーは57歳。意外に思えるかも知れないが、コネリーがアカデミー賞の候補となったのは、これが最初で最後。実はこの受賞をきっかけに、コネリーは多くの映画ファンから“名優”と呼ばれるようになったのである。



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