伝説にリアリティを与える事件史とのリンク
それを象徴するものが、本作の史実や実社会との緊密なアクセスだ。『呪怨:呪いの家』の物語は1988年に端を発し、時代の経過に合わせて当時じっさいに起こった猟奇殺人や大量殺人事件が作中にて言及される。劇中で全てを明示してはいないものの、それらは近代事件史においてもショッキングなもので、同時代を生きてきた視聴者には、当時の記憶を喚起させる装置として充分に作用する。
たしかに「呪怨のヒントとなった出来事」と銘打つからには、リアリティを担保にするのは当然のことだろう。しかし『呪怨』をダークサイドな世相の沿革に編み込み、同シリーズを現実と地続きだとする作意は極めて新鮮だ。不穏な空気を感じさせる別の事象とリンクづけることで、呪怨の伝説があたかも史実であるかのようにグイグイと迫ってくる。
昭和から平成へと変わっていく、そんな混沌の窪みに存在する“闇”。不鮮明な時代と邪霊譚が表裏一体であるということへの、ヴィンテージな時代設定がもたらす説得力。それは単に『呪怨』の世界と接合していくうえで逆算された、時代設定でもあるだろう。
だがなにより、得体の知れない恐怖に迫真性を与えるための、作り手の創意と悪趣味さをそこに強く感じるのだ。と同時に『呪怨』の世界観をより強化していこうとする、前のめりな創造性を覚える。家ホラーという閉じられた空間から解放され、ひとつのフィクションが拡大されたクロニクルとなる愉悦がこの作品から噴出している。