立ち上がる呪怨サーガの円環
また同シリーズのモンスター怨霊である伽椰子や俊雄が周知されていくと共に通俗さを増し、キャラクターホラーとして陳腐になりつつある今、そんな現況から距離を置き、ゼロからの出発点として『呪怨』の恐怖に立ち戻ろうとしている。
もっとも、罪科なくとも死に引き込まれる怖さと、呪いの家が生み出された起因が何なのか、そこに明確な回答を出すのは『呪怨』の魅力を削ぐのでは? という懸念がよぎる。鑑賞者との距離が保たれていない安全圏の喪失も、同シリーズの大きな魅力だからだ。しかしここまで広く周知されてきた『呪怨』だけに、そろそろ新たな局面に入ってもいい頃だろう。
とはいえ、『呪怨:呪いの家』が来る最初の『呪怨』の世界へとタッチしていき、呪怨サーガの円環を結ぼうとしているのではと想像するのは楽しい。劇中におけるさまざまな要素が、後の伽椰子や俊雄を形成していくのかと考えを巡らせるだけで、恐怖とは別の身震いをもよおしてくる。次期シリーズの製作も決定しており、今後もますます目が離せないタイトルだ。
映画評論家&ライター。主な執筆先は紙媒体に「フィギュア王」「チャンピオンRED」「映画秘宝」「熱風」、Webメディアに「映画.com」「ザ・シネマ」などがある。加えて劇場用パンフレットや映画ムック本、DVD&Blu-rayソフトのブックレットにも解説・論考を数多く寄稿。また“ドリー・尾崎”の名義でシネマ芸人ユニット[映画ガチンコ兄弟]を組み、TVやトークイベントにも出没。Twitter: @dolly_ozaki
Netflixドラマ「呪怨:呪いの家」
2020年7月3日配信スタート