観客も見ることができない透明人間
今回の透明人間は、観客もなかなか見ることができない。これまで、それぞれの時代の最新鋭の映像技術によって”見える化”して来た透明人間映画とは、そこが一線を画している点だ。VFXを使わず、計算し尽くされたショットを駆使して、観客の目を一点に集中させる。緊張感を限界にまで高める手法こそが、リー・ワネルが本作で試みた、最も斬新なアイディアだ。
『透明人間』(c) 2020 Universal Pictures
見えない透明人間、ひたひたとやって来る気配、微妙な空気の振動、などなど。殺伐とした近未来的空間で展開する作品は、ホラー映画を新たな領域にまで押し上げている。
本年度5位の興収記録と同時に、主なメディアが今年前半のベストの1本に挙げる最大の理由は、そこにあるのかも知れない。
参考記事
https://observer.com/2020/02/jason-blum-interview-the-invisible-man-blumhouse-productions/
文 : 清藤秀人(きよとう ひでと)
アパレル業界から映画ライターに転身。映画com、ぴあ、J.COMマガジン、Tokyo Walker、Yahoo!ニュース個人"清藤秀人のシネマジム"等に定期的にレビューを執筆。著書にファッションの知識を生かした「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」(近代映画社刊)等。現在、BS10 スターチャンネルの映画情報番組「映画をもっと。」で解説を担当。
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『透明人間』
2020年7月10日(金)公開
(c) 2020 Universal Pictures
配給:東宝東和