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『卒業白書』トム・クルーズの光り輝く傑作は、ベルトルッチの『暗殺の森』を意識して作られた!?

(c)Photofest / Getty Images

『卒業白書』トム・クルーズの光り輝く傑作は、ベルトルッチの『暗殺の森』を意識して作られた!?

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1983年を代表するスリーパーヒット



 1983年8月5日、全米で公開された『卒業白書』は、620万ドルの製作費に対して約10倍にあたる6,350万ドルの興収を弾き出し、その夏のスリーパー(予想外)ヒットとなる。つまり、トム・クルーズは映画界にデビューしてからたった2年で、それも初の主演映画で、スターとしての地位を早々に確立したわけだ。当時まだ21歳。『トップガン』(86)より3年も前のことだ。


 アメリカ、イリノイ州で最も裕福な街として知られるシカゴのグレンコー。そこに住む高校生のジョエルが、両親の留守中に自宅で売春パーティを開いて大儲けする。ジャンルとしてはいわゆるセックス・コメディだが、そこに大きな付加価値を付けたのが、監督ポール・ブリックマンの洗練されたダークなタッチだ。


『卒業白書』予告


 レイバンのサングラスをかけてタバコを吹かすジョエルが、日頃悩まされている悪夢について話し始める。それは、自転車に乗ったジョエルが隣人宅に侵入すると、シャワールームでは美女が湯気の中に佇んでいて、ジョエルは彼女に促されてシャワールームに足を踏み入れるのだが、湯気の先には試験真っ只中の高校の教室が広がっているという悪夢である。


 この冒頭のシーンから、トム・クルーズの独特の甘い語り口がエロチックなモノローグで、物語は展開してゆく。背後では、ドイツのエレクトロニック・バンド、タンジェリン・ドリームの電子サウンドが小刻みに流れ、見る者の視覚と聴覚を同時に刺激し続ける。そして、観客はジョエルの悪夢とも現実ともつかない奇妙な出来事を目撃しながら、ほぼ常時、絶頂一歩手前のもどかしいような快感を、持続して味わうことになるのだ。



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