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『マッドマックス』監督ジョージ・ミラーは、低予算での映画製作をどう切り抜けたのか

(c) 2013 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.

『マッドマックス』監督ジョージ・ミラーは、低予算での映画製作をどう切り抜けたのか

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撮影中に死者が⁉ 低予算が危険を招く



 本作は、その当時まだ駆け出しであるジョージ・ミラー監督の処女作ということもあってか、予算はほとんど確保できなかった。非常に低予算で製作された映画であり、その予算の大半はというと、劇中車輌の改造費用に使われた。例えば、劇中終盤でマックスが乗る、特殊迎撃用改造車(V8インターセプター/ブラック・パスゥート・スペシャル)は、フォード・オーストラリア社製のフォード・ファルコンXBをベースとしている。ボンネットから大きく突出する、巨大スーパーチャージャーを特徴とし、600馬力にチューンされたモンスターマシンだ。公開から40年を経た現在も、世界中のファンがレプリカを製作するほどの人気車だ。


 また、劇中序盤でナイトライダーにより強奪される、特殊警察用の改造パトカーは、オーストラリアの自動車ブランド、ホールデン社製のモナーロHQがベースとして用いられた。さらに本作には、川崎重工業社製のZ1000や、本田技研工業社製のCB750など、日本の二輪車も多く登場し、撮影にはすべて本物の自動車が用意された。映画の予算はそれらの車輌代にも費やされ、そういう意味では金銭的な余裕はなかった。そのため、撮影用のオープンセットを設営するまでの費用は残されておらず、大半の撮影では既存の建築物を利用したという。



『マッドマックス』(c) 2013 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.


 劇中の司法省ビル(M.F.P.の本部)は、老朽化した昔の水道局のビルを利用し、M.F.P.本部地下駐車場はメルボルン大学構内のものが用いられた。今ではCGI/VFXのようなデジタル処理が主流だが、当時はそんな便利なものはないので、クラッシュシーンなどもすべて本物を用いて撮影された。それらのクラッシュシーンがあまりにもリアルすぎたので、撮影中に数名の死者を出したと噂されるほどだったが、これは配給会社による誇大広告だった、という説もある。実際には、何人かのケガ人は出たものの、幸い死者はいなかったようだ。出演俳優や関係者の証言からも死者の存在は否定されている。


 ただ、本作の撮影現場は極めて無法で、野蛮だったとされる。というのも、予算が限られていたので、勝手に道路を封鎖するなどして、危険なゲリラ撮影を敢行したというのだ。しかも驚きなのは、本作に登場する暴走族だが、セリフのある俳優を除けば、そのほとんどがホンモノの暴走族だというのだ。演技未経験の彼らホンモノを起用することで、作品によりリアリティを持たせると同時に、予算も節約しようというのが狙いだった。その目論見は成功したと言えるが、その当時の撮影現場はひどく殺伐としていたに違いない。



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