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『mid90s ミッドナインティーズ』自由への渇望を、1枚の板に乗せて――過日の記憶を呼び起こす青春劇

『mid90s ミッドナインティーズ』自由への渇望を、1枚の板に乗せて――過日の記憶を呼び起こす青春劇


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映画制作を勧めた、スパイク・ジョーンズの存在



 大声で笑って、バカ騒ぎして、でも哀しかった――。

 少年たちの刹那の青春に、かつての痛みがほの見える。


 もはや、映画好きなら知らない者はいないほどの存在にまで成長した、アメリカの映画配給・制作会社A24。『ムーンライト』(16)と『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』(19)ではブラッド・ピット率いる制作会社「プランBエンターテインメント」と組んでおり、『レディ・バード』(17)のグレタ・ガーウィグや『ディザスター・アーティスト』(17)のジェームズ・フランコなど、俳優の監督作も積極的に支援している。


 そんなA24が、次に組んだ相手は、なんと個性派俳優のジョナ・ヒル。レオナルド・ディカプリオと共演したマーティン・スコセッシ監督作『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(13)等々コメディ色の強い彼が、長編初監督作でどんな映画を作るのか。大いに気になるところだったのではないか。


 而して我々の前に現れた『mid90s ミッドナインティーズ』(18)は、なんとも懐かしく、淡くて切ない青春映画だった。舞台は、1990年代半ばのアメリカ・ロサンゼルス。暴力に物を言わせる兄イアン(ルーカス・ヘッジズ)に辟易している13歳の少年スティーヴィー(サニー・スリッチ)は、気のいいスケボー少年たちと知り合ったことで、退屈な日常に新たな楽しみを見出していく。



 全米4館からスタートした本作は、観客・批評家双方から高い支持を得て、最終的に1,200スクリーン超まで拡大するムーブメントを起こした。2018年のナショナル・ボード・オブ・レビューの「トップ10インディペンデント映画」にも選出。同じくトップ10入りした『荒野にて』『search サーチ』『ビューティフル・デイ』といった作品群を見ても、本作の評価が見て取れるだろう。


 ジョナ・ヒルの監督としての手腕が証明される結果となったが、ここで本作を成功に導いたキーパーソンを、何人か紹介したい。


 まずは、スパイク・ジョーンズ。『her/世界でひとつの彼女』(13)や数々のMVを手掛けたトップクリエイターで、ジョナ・ヒルの盟友でもある。2人は2014年、ファッションブランドのショーのために戯曲を共同で執筆しており、その経験が『mid90s ミッドナインティーズ』の礎となった。


 ジョナ・ヒルはのちに『mid90s ミッドナインティーズ』へとつながる脚本を書いた際、主人公の脳裏にフラッシュバックするシーンとして、「少年が友だちとスケボーをする」描写を入れたという。


 その部分への思い入れの強さをジョーンズに見抜かれ「そっちをメインにして書いて、映画にしたら?」とアドバイスを受けたことで、本作の制作を決意したそうだ。劇中では、主人公のスティーヴィーが仲間の言葉で成長していく様子がつづられているが、ジョナ・ヒルとスパイク・ジョーンズの関係性と重なるものがある。




 そしてもう1人、プロデューサーに名を連ねたスコット・ルーディンにも注目したい。史上16人しかいないというアカデミー賞、トニー賞、グラミー賞、エミー賞の4賞受賞者であり、『ノーカントリー』(07)、『ソーシャル・ネットワーク』(10)、『レディ・バード』等の制作を手掛けた超ベテラン。ジョナ・ヒル自身も、百戦錬磨の製作者とのタッグは非常に心強かったと振り返っている。


 また、映画監督としての動き方には、“俺たちシリーズ”で知られるセス・ローゲンとエヴァン・ゴールドバーグの「自分の意志で映画を作る」姿勢や、マーティン・スコセッシ監督の「役者がキャラクターに入り込めるように、当時の音楽が入ったiPodを渡す」といったようなテクニックを踏襲したそうだ。


 ジョナ・ヒル自身も、以前よりプロデュースを積極的に行っており、俳優業の中で培ってきたノウハウを総動員して作り出したのが、この『mid90s ミッドナインティーズ』なのだ。



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