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『メイキング・オブ・モータウン』それはまるでモータウンの曲のように楽しく、そして甘酸っぱいドキュメンタリー

(c)2019 Motown Film Limited. All Rights Reserved

『メイキング・オブ・モータウン』それはまるでモータウンの曲のように楽しく、そして甘酸っぱいドキュメンタリー

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スティーヴィーとマーヴィン、2人の伝説



 モータウンの良さは何と言っても楽曲の素晴らしさである。今回明らかにされるスティーヴィー・ワンダーの『フィンガーティップス パート2』の秘話は、彼が小さいころからいかに天才だったかを物語っている。しかもその秘話が、その歴史となった映像とともに語られているのが本作の贅沢なところであろう。


『メイキング・オブ・モータウン』予告


 そして何と言っても、マーヴィン・ゲイの『ホワッツ・ゴーイン・オン』アルバムの秘話のかっこよさは筆舌に尽くし難い。このシーンが本作のクライマックスになっているようにも感じた。


 冒頭からベリー・ゴーディが語っていたように、黒人だけではなく白人にも買ってもらうことで、モータウンはヒット曲を生んできた。そのために白人のビジネスを取り入れ、白人を雇うこともあり、それは時に黒人からの批判も受けた。


 白人に受け入れられたモータウンでも、南部に行けば一般人と変らない黒人であり、銃弾が飛んでくることだってあった。そして、デトロイトの街も、映画『デトロイト』(17)で描かれたように大きな反乱が起きていた。そうした中で、アーティストの意識は時代とともに変化している。それがよく反映されたのが、マーヴィン・ゲイの『ホワッツ・ゴーイン・オン』であった。


 そしてそれは、ベリー・ゴーディがこのアルバムは「受けない(ヒットしない)」と反対したアルバムでもあった。しかし、歴史に残る名アルバムとなり、先述の通り2020年の今でもスパイク・リーが映画で使用するようなアルバムとなったのだ。ベリー・ゴーディの数少ない失敗。その部分がクライマックスになっているのが、非常に興味深い。


『ザ・ファイブ・ブラッズ』予告


 本作を見れば、なぜスパイク・リーが『ザ・ファイブ・ブラッズ』にてマーヴィン・ゲイの『ホワッツ・ゴーイン・オン』のアルバムにこだわったのか、明確に分かるはずだ。『再会の時』で描かれたように、モータウンを聴けばよみがえる思い出もあるはず。


 そして、これからもモータウンが生んだ名曲の数々が、映画に彩りを与えてくれるであろう。彼らの名曲は時代を背負っているのだ。


 本作は、モータウンの名曲とともに、その会社の歴史や秘話が語られている贅沢な作品だ。そしてその歴史は、モータウンの曲のように時に軽快で時に甘酸っぱいのである。



文:杏レラト<あんずれらと>

雑誌「映画秘宝」(洋泉社)を中心に執筆。著書『ブラックムービー ガイド』(スモール出版)が発売中。




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作品情報を見る



『メイキング・オブ・モータウン』

2020年9月18日(金)よりヒューマントラストシネマ 渋谷ほかにて 全国順次ロードショー!

配給:ショウゲート 

(c)2019 Motown Film Limited. All Rights Reserved

公式サイト:makingofmotown.com

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