2020.09.18
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名門レコード・レーベル「モータウン」の始まり
R&Bレコードレーベルであるモータウン・レコードは今も昔も映画に花を添えている。
例えば『再会の時』(83)では、モータウン・レコードがサウンドトラックのほとんどを担当している。『再会の時』は、大学時代の友人が何十年かぶりの再会を描いた作品で、主人公たちの大学時代のヒット曲がモータウンであり、彼らの思い出の曲として映画では存在感を出していた。最近では、スパイク・リー監督の『ザ・ファイブ・ブラッズ』(20)での、マーヴィン・ゲイのアルバム『ホワッツ・ゴーイン・オン』の使用が印象的だった。
モータウン・レコードはなぜここまで愛されているのか? そもそもモータウンとは何なのか?
何度もモータウンの曲が映画に使用され、所属アーティスト主演の映画『ビリー・ホリディ物語/奇妙な果実』(72)、所属アーティストの物語『ゲット・レディ! 栄光のテンプテーションズ物語』(98)、さらにはモータウンのスタジオミュージシャンを追った『永遠のモータウン』(02)まで存在しているが、その大元であるモータウン・レコードそのものを追うドキュメンタリーは今までなかった。今回、映画で初めてモータウンの歴史が紐解かれる。
「質では妥協しない。チャンスは常にある」そんな言葉から本作は始まる。この言葉は、1960年代にモータウンの品質管理会議で飛び出した言葉だ。こんな感じでいきなり貴重な音源が、冒頭から聞けるのである。
モータウン・レコードは、1959年にデトロイトにて事業家の息子であるベリー・ゴーディが設立。デトロイトの住宅街の一画に、モータウンの本社「ヒッツヴィルUSA」を構えた。「ヒッツヴィル」は、Hits(ヒット曲)+Ville(市)のことでつまりヒット曲が多く生まれる都(みやこ)という意味で、モータウンのニックネームである。本社であり、スタジオを構えたヒッツヴィルUSAは名に恥じない多くの名曲を生んだ。
貴重な秘話をベリー・ゴーディ自身が話す。歌手として、ソングライターとして、そしてモータウンの副社長として、ベリー・ゴーディの右腕スモーキー・ロビンソンも、ともにその秘話を語っている。2人の仲睦まじさは、本作の映像で十分に分かる。時には懐かしく語り、時には2人で社歌まで歌い、時には賭けまでも!このようなシーンだけでも、ファンは大満足だろう。
ベリー・ゴーディ自身、「私がこの映画を作るならば、”ベリーとスモーキー”だけ。他は抜きだ」と言っており、2人の仲の良さは本物だ。2人が経験したことは楽しいことばかりではなかったが、今の2人の笑顔は印象的で温かく、こちらまで楽しくなってくる。