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『メイキング・オブ・モータウン』それはまるでモータウンの曲のように楽しく、そして甘酸っぱいドキュメンタリー

(c)2019 Motown Film Limited. All Rights Reserved

『メイキング・オブ・モータウン』それはまるでモータウンの曲のように楽しく、そして甘酸っぱいドキュメンタリー

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『メイキング・オブ・モータウン』あらすじ

ビートルズやローリング・ストーンズが憧れ、日本を含む世界の音楽に影響を与え続けているモータウン。愛称はヒッツヴィルUSA。米ミシガン州デトロイトの西グランド通り2648番地にある一軒家を拠点に、若者に向けたポップな音楽を発信し、アメリカン・ドリームを実現させた。


創設者はベリー・ゴーディJr.。1959年、家族から借りた800ドルを資金にタムラ・レーベルをスタートさせ、モータウンの歴史は幕を開けた。その黄金期を彩ったのは、ミラクルズ、テンプテーションズ、ダイアナ・ロス&スプリームス、フォー・トップス、スティーヴィー・ワンダー、マーヴィン・ゲイ、ジャクソン5といったスターたち。ダンスやエチケットも含め徹底した管理体制を敷き、全米No.1ヒットを連発していく様は、かつてゴーディが働いていた自動車工場の組み立てラインをヒントにしていた。特にクオリティ・コントロールと呼ばれた品質管理会議は、ソングライターやプロデューサーたちの競争心を煽り、ブランドに磨きをかけていく。


一方で苦難にも直面した。人種差別や暴動、作家の離脱。それでも、人種や性別に分け隔てのない社風同様、モータウンの音楽には分断した社会をひとつにする力があった。やがて反戦などの社会的メッセージを含んだ革新的な楽曲も登場。キング牧師とも親交を深めたレーベルには、後にネルソン・マンデラやオバマ元大統領も敬意を表すことになる。


『メイキング・オブ・モータウン』は、映画ビジネスに参入すべくLAに本社を移すまでの歴史や名曲誕生秘話を、創設者のゴーディが親友にして戦友のスモーキー・ロビンソンと旧交を温めながら説き明かしていくドキュメンタリー。関係者や著名人の回想や証言も交えた貴重なエピソードの数々。これは引退を表明したゴーディが初めて語る創業一代記であり、20世紀に最も影響力を持った独立レーベルの正史である。


Index


名門レコード・レーベル「モータウン」の始まり



 R&Bレコードレーベルであるモータウン・レコードは今も昔も映画に花を添えている。


 例えば『再会の時』(83)では、モータウン・レコードがサウンドトラックのほとんどを担当している。『再会の時』は、大学時代の友人が何十年かぶりの再会を描いた作品で、主人公たちの大学時代のヒット曲がモータウンであり、彼らの思い出の曲として映画では存在感を出していた。最近では、スパイク・リー監督の『ザ・ファイブ・ブラッズ』(20)での、マーヴィン・ゲイのアルバム『ホワッツ・ゴーイン・オン』の使用が印象的だった。


 モータウン・レコードはなぜここまで愛されているのか? そもそもモータウンとは何なのか? 


 何度もモータウンの曲が映画に使用され、所属アーティスト主演の映画『ビリー・ホリディ物語/奇妙な果実』(72)、所属アーティストの物語『ゲット・レディ! 栄光のテンプテーションズ物語』(98)、さらにはモータウンのスタジオミュージシャンを追った『永遠のモータウン』(02)まで存在しているが、その大元であるモータウン・レコードそのものを追うドキュメンタリーは今までなかった。今回、映画で初めてモータウンの歴史が紐解かれる。


『メイキング・オブ・モータウン』予告


 「質では妥協しない。チャンスは常にある」そんな言葉から本作は始まる。この言葉は、1960年代にモータウンの品質管理会議で飛び出した言葉だ。こんな感じでいきなり貴重な音源が、冒頭から聞けるのである。


 モータウン・レコードは、1959年にデトロイトにて事業家の息子であるベリー・ゴーディが設立。デトロイトの住宅街の一画に、モータウンの本社「ヒッツヴィルUSA」を構えた。「ヒッツヴィル」は、Hits(ヒット曲)+Ville(市)のことでつまりヒット曲が多く生まれる都(みやこ)という意味で、モータウンのニックネームである。本社であり、スタジオを構えたヒッツヴィルUSAは名に恥じない多くの名曲を生んだ。



『メイキング・オブ・モータウン』(c)2019 Motown Film Limited. All Rights Reserved


 貴重な秘話をベリー・ゴーディ自身が話す。歌手として、ソングライターとして、そしてモータウンの副社長として、ベリー・ゴーディの右腕スモーキー・ロビンソンも、ともにその秘話を語っている。2人の仲睦まじさは、本作の映像で十分に分かる。時には懐かしく語り、時には2人で社歌まで歌い、時には賭けまでも!このようなシーンだけでも、ファンは大満足だろう。


 ベリー・ゴーディ自身、「私がこの映画を作るならば、”ベリーとスモーキー”だけ。他は抜きだ」と言っており、2人の仲の良さは本物だ。2人が経験したことは楽しいことばかりではなかったが、今の2人の笑顔は印象的で温かく、こちらまで楽しくなってくる。



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