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『ハード・デイズ・ナイト』ジューク・ボックス・ミュージカルの“市民ケーン”と評された、ミュージックビデオの原点

(c)Bruce & Martha Karsh

『ハード・デイズ・ナイト』ジューク・ボックス・ミュージカルの“市民ケーン”と評された、ミュージックビデオの原点

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『ハード・デイズ・ナイト』あらすじ

ビートルズは、追いかけて来る熱狂的なファンの群を振り切り、列車に飛び乗る。そんなビートルズの日常を、彼らと一緒になって撮った、実験心に富んだ新しいスタイルのコメディ。他愛ない会話すら耳に心地よく、もちろん、演奏シーンは他の追随を許さぬセンスで鮮やかに切りとられている。彼らの息吹は完全に観る者に伝わり、まるで、これを観る度に四人が傍らに来て、歌い騒いでくれる...


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1964年、ビートルズの輝ける青春映画



 いつの時代でも振り出しに戻って、見直したくなるビートルズ映画といえば、『ハード・デイズ・ナイト』(公開当時の邦題『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』)。64年に作られた彼らの映画デビュー作である。モノクロで87分という“ささやかな作品”。大きな仕掛けもなく、主演の4人が走りまわって歌うだけ。それなのに、いつ見ても心がはずむ。撮影された時代から、すでに55年以上という長い時間がすぎているが、そこにはまばゆい光があふれている。刻み込まれているのは、4人の屈託のない無邪気な姿。映画というタイムカプセルの中に、永遠の輝ける青春像が刻み込まれ、見るたびに幸せな気持ちになれる。


 この映画が作られた64年、ビートルズは初めてアメリカを訪問し、大きな成功を収めた。そのきっかけになったのは2月に出演したアメリカの国民的な音楽番組『エド・サリヴァン・ショー』である。初出演となった9日の放送は72%という驚異的な視聴率を上げ、7,300万の人々が彼らの演奏に釘づけになったという。


『エド・サリヴァン・ショー』


 また、4月には<ビルボード>のチャートの1位から5位までがすべてビートルズの曲で占められ、まさにアメリカ中にビートルズ旋風が吹き荒れた。前年の63年11月にアメリカはケネディ暗殺という衝撃的な事件を体験している。その沈鬱なムードが、英国からやってきた4人の明るい若者たちよって吹き飛ばされたともいわれる。それまで英国出身のミュージシャンがアメリカで成功するのはむずかしいと言われていたが、ビートルズはその最初の成功例となった。


 そして、記念すべきデビュー映画は、アメリカでの記念すべき成功の年に生まれた。映画に登場する4人のきらめきは架空のものではなく、まさに大きな成功を手にした彼らの、当時の輝きそのもの。ジョン、ポール、ジョージ、リンゴの4人は大きな光に包まれていた。



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